久しぶりに富士山が、その雄姿を見せた。天候は晴れ。気温30.4度。風速4.8メートルが大会フラッグを揺らす。7315人のギャラリーが大会舞台である裾野カンツリー倶楽部に押し寄せた。大会初日の最多来場者数を更新する人数を記録したのだった。絶好のゴルフ日和。この大会終了後に左股関節手術を受けることが決まっている芹澤信雄は、一打一打を楽しむかのようにプレーした。左股関節痛で「下り傾斜は(負担が強く)辛かったけれど、最高の同伴競技者と回れて、いい気分で打てました。フルスイングが出来ず、軽めのショットに徹したのが良かったかも」。3バーディー・1ボギー70にスコアをまとめ上げ、12位タイでフィニッシュ。
芹澤と同組でプレーした中嶋常幸は「大ギャラリーに見守られて、いつも以上にやる気になったね。ドライバーショットは負けないように打ち、スコアは作れなかったけれど(2バーディー・4ボギー74)、64歳にしては力のあるショットは見せられたと思う」と、ホールアウト後、流れる汗を拭いながらこの日のラウンドを振り返った。中嶋に「負けない」気を起こさせたのは同じ組のもう一人の選手、アマチュアゴルファー原辰徳氏だ。「(プロ野球選手ではなく)ゴルファーだったらメジャーに出る選手なっていたと思う」。ラウンド後、原氏のゴルフをつぶさに見ての感想をそう表現した。
芹澤、中嶋、原氏とも互いに良い刺激を与え、受けながらのラウンド。バーディー奪取シーンではギャラリーを喜ばせるパフォーマンスを見せ、歓声と拍手を倍加させた。
「良い雰囲気の中で、自分としては戦う気概を持って臨みました」と原氏。結果は2バーディー・6ボギー・1ダブルボギー78。68位タイ。「アイアンショットが良くありませんでした。野球に例えるなら4打数1安打。良かったのか悪かったのか微妙な感じです(苦笑)。素晴らしいコースセッティングに仕上げられた最高の舞台でプレーさせて頂き、しかもトッププレーヤーと一緒に回れて、良い思い出を刻めました。プロ野球の日本シリーズに出場したくらいのレコードです」。
この大会を出場最後と決めている原氏。残り2日間36ホールでかつての「4番サード原」のように、ギャラリーに印象を与えるゴルフを期待したい。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)