首位とは2打差の2位でスタートしたプラヤド・マークセン。前日の取材インタビューでは「2打差はちょうど良い。追いかける方が良い」と語り、咳をした。日本語で「ごめんなさい」と言ってインタビューを終えたのだった。
一夜明け、木曜日から引き始めていた風邪は、話すと咳が出る。鼻水が止まらないほど悪化していた。
「スタート前から体が思わしくなく、気怠さを感じていました。1番パー5ホールのティーショットを左に曲げてのOB。そんな体調だから仕方ないと割り切りました」とマークセンは振り返った。
それでもボギーに抑えたが、5番、6番ホールでもボギーを叩いて優勝争いから後退して行く。しかし、7番ホールでようやくバーディーを奪うと「体調が悪いなりにベストを尽くそう」と気合スイッチが入った。気持ちがボールに乗り移る。9番ホールでは13メートル強のバーディーパットがカップに沈み、10番パー5ホールではツーオンに成功してのバーディー奪取、12番ホールでも6メートルのバーディーパットが決まった。通算8アンダーとなり、マークセンの名がリーダーズボード最上段にどっしりと居座った。久保は同ホールでボギーを打ち、通算7アンダー2位に後退した。14番ホールでのOKバーディーで通算9アンダーとし、16番ホールではダメ押しのバーディーパットをねじ込んで通算10アンダーにまでスコアを伸ばしたのだった。
2位の久保とは2打差で迎えた最終18番パー4ホール。ティーショットを右ラフに打ち込み、2打目をレイアップ。寄せワンを狙った。
「久保さんがバーディーで、僕がボギーなら(通算9アンダーで)プレーオフになることは分かっていました。それでも構わないと決めていましたよ」
久保のバーディートライはカップの縁を舐めたが、入りはしなかった。マークセンはパーパットを外したが、短いボギーパットをしっかり沈め、大会2勝目、今季4勝目、シニアツアー通算12勝目を飾ったのだった。
「風邪の影響ではパワーがなく、スイング軸がブレてばかりいましたから、ショットの方向性は安定しませんでした。だけど距離だけは出ていたので2打目の距離は短いクラブで打てました」と勝因をマークセンは分析してみせた。続けて「体調が良くなかったにも関わらず、優勝できたのは本当に嬉しい。体調が戻ったら、あと2、3勝はしたい」と新たな目標を口にした。
開催5回を数える本大会ではまだ連覇を果たした選手はいない。「来年は連覇に挑みますよ」。マークセンの白い歯が、いつも以上に眩しく輝いて見えた。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)