シニア通算2勝目達成の夢は、またしてもプラヤド・マークセンによって打ち砕かれた。
9アンダー単独首位でティーオフした久保勝美。6月のスターツシニアではマークセンを1打差で追う最終日だったが、今回は2位のマークセンに2打差を着けていた。1番ホールでマークセンがボギーを打ち、その差は3打差に広がった。
だが、それで余裕が生まれたわけではなかった。スタート前の練習グリーンで違和感を覚えた。先日はタッチが合っていたのに、今日は合わない。同じようにパットしているものの、どうしてもショートしてしまう。「午後からはグリーンが遅く、重くなるとは聞いていたのですが、朝からショートを繰り返すのは、何故なんだと思いました」と久保は振り返る。
優勝争い。プレー次第で逃げ切れる。そんな考えが頭を過ぎったわけではなかったが、アイアンショットの距離感も狂っていた。ショートしたり、オーバーしたりと9バーディーを奪った前日ショットの切れがない。まるで追い打ちを掛けるかのように、前日の最終ホールと同じフックラインのバーディーパットを1番ホールで迎え、前日同様にパットをショートしてしまい、タッチが出せなくなる。幸いパー5だったことでボギーは免れた。4ホール連続パーセーブできたが、5番パー4ホールで大叩きを演じる。
「ティーショットを曲げ、2打めはグリーン右手前のラフ。ボールが浮いていたのでロブショットにトライしたのですが、トップしてしまいボールはグリーン奥へ。4オン2パットのダブルボギーにしてしまいました」
バーディーは11番ホールまでお預けとなった。しかし、12番ホールでパットを2度もショートしての3パットでのボギーを打つ。これが勝利を手放す最大要因となる。
「マークセンはボギーが3つも先行したのに、徐々にエンジンが掛かり、勝負どころのパットをポンポン決める。やっぱり上手いです、強いです。敗れて…やっぱり悔しいです」 最終組で一緒に回った練習ラウンド仲間の崎山武志は、上がり3ホールで3連続バーディーを奪い、久保と同じく通算8アンダー2位タイでフィニッシュ。マークセンに1打差まで詰め寄ったのだ。スコア提出後にロッカールームへ向かった二人。崎山は久保に向かって愛の鞭を打った。「下手!」。久保は答えた。「もっと練習します!」。
勝てるチャンスは有った。優勝するには上がり3ホールでバーディー奪取が不可欠。崎山は、それを下手の二文字に凝縮し、久保は真意を汲み取っての返事をしたのだった。