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シニアツアー

【ノジマチャンピオン杯・FR】大手術後の優勝を飾ったマイヤーが4年ぶりの嬉しい2勝目

2018年04月20日

 表彰式が終わり、記者会見も終わり、だれもいなくなった18番ホール。グレゴリー・マイヤー(56)は、1人で18番グリーン横のスコアボードの前に立った。携帯電話を取り出し、スコアボードをバックに「自撮り」した。「奥さんにLINEで送ったよ」と、クラブハウスに戻ってニコニコした。

 うれしい4年ぶりのツアー勝利だった。高見和宏と6アンダーで並ぶ首位での最終日スタートながら、3打差以内に15人がひしめく混戦。誰が優勝してもおかしくない。「今日は、初日と違って朝の練習場で調子がよかった。でも、調子がいいと調子に乗るから危ないかなと思った。なるべくオーバーエキサイトしないこと。気持ちがアップしたりダウンしたりしないようにしようと思った」という。

 1番で4メートルを入れ、2番では「奥から20メートルぐらいあった」というパットを沈めて連続バーディー発進。「これがよかった」という。5番パー5で3メートルを沈めて、優勝ラインともいわれていた通算9アンダーになった。そこでスコアボードを確認したところ、6番で9メートルから3パットのボギー。「ほかの人のスコアを見ないことにした。いい天気だったし(下位から)ビッグスコアが出るかもしれない。とにかく、自分が前にドンドン行こう」と、気持ちを切り替えた。

 昨年も何度か優勝争いをした。この大会では最終18番で3パットしてプレーオフ進出をつぶした。「いつも(記者会見は)初日だけ。次の日はいない」と、肩をすくめた。その原因の1つが「相手のスコアを見て、自分がゴルフを変えていたこと」だという。今回は「相手のスコアはわからない方がいい。無視する。40年ゴルフやっていてようやくわかったね」と笑った。

 その「無視作戦」が功を奏したのか、思っていた通り、下位から室田淳、金鍾徳らが追い上げてきて1打差に迫られもしたが、それを知らないマイヤーは崩れることなく12番で4メートル、14番で3メートルを入れて伸ばしていく。17番では奥から15メートルが入った。通算12アンダーとし、これがダメ押しになった。18番第2打地点で、スコアボードを見て2位と4打差あることを知った。「安心したね」と、2014年マルハン太平洋シニア以来のツアー優勝を手にしたことを確信した。

 胸が締め付けられるような発作が度々あって、2014年12月に検査したところ、胸の締め付けとは関係なかったが、大動脈瘤が見つかった。心臓弁の交換も含む8時間半の手術後、翌年3月まで療養。5月にツアーに復帰した。大手術後、今回が初めてのツアー優勝になった。「今はもう傷口も痛くない」と、全快している様子だ。

 「チャンピオン、うれしいなあ」。56歳になり「いつ最後の優勝になるか分からないからチャンスがあれば勝ちたかった。娘(2人)にもトロフィーを見せたかったし」という。家族への自撮り報告もそんな気持ちから。「娘はまだ小さい(14歳、7歳)し、これからもいっぱい仕事しないといけないね。これが最後の優勝にならないように」。4年ぶりの2勝目は、マイヤーにとって新たな活力になったようだ。

(オフィシャルライター・赤坂厚)