海老原清治、70歳がエージシュートの70をマークして首位に並び、4人プレーオフを制して逆転優勝、大会3連覇を達成した。
優勝するまでの過程には様々なドラマがある。そのドラマが自分の思い書いた台本通りに進んだなら、どれほど楽しく痛快だろう。会心の優勝と表現して当然だろう。
前日は3バーディー・6ボギー73。3パットを4回も打ってしまったことで、エージシュートを逃していた。通算3オーバー8位タイ、首位とは3打差で迎えた最終日。
「タフなコースだけにビッグスコアは出そうにない。まずはエージシュート、それも60台でマークしたなら逆転優勝のチャンスが生まれてくるはずだ」
海老原はゲームプランと目標を明確にしてスタートティーに向かった。エージシュートをマークするには自身にとっての鬼門ホール、4番パー5ホールでボギー以上のスコアを打たないようにする課題があった。「狭くて、ツーオンは出来ないし、昨日はボギーを打ってしまったから」と海老原。何とかパーでしのぎ、前半は2バーディー・2ボギー35。スコアを保持できた。
通算3オーバーのまま迎えた17番パー4ホール。ピンまで80ヤードの2打目をサンドウッェジで打った。ピン方向へまっすぐ飛び、オーバーしたものの、バックスピンでカップへと向かい、そして入った。ショット・イン・イーグル。通算1オーバーにスコアを伸ばしたものの、最終ホールでボギーを打ち、通算2オーバーでフィニッシュ。勝負の行方は首位に並んだ山本善隆、中島弘二、谷中宏至との4人プレーオフへともつれ込んだ。プレーオフは1番ホールからのサドンデス方式。同1ホール目でボギーを打った中島が脱落。入れればウイニングパットとなる4メートルのバーディーパットを海老原は外す。同2ホール目。安中はスリーオン。山本は8メートルのバーディーパットを逃した。
海老原が5メートルのバーディーパットを沈めれば、それがウイニングパットとなる。パットラインを読みながら「キャディーさん、ピンを抜いてもらえるかな」と海老原は声を発した。アゲンストの風でピンが手前側に傾き、カップインの入り口が狭くなっていることに気づいたのだ。
「4番ホールまでもつれ込んだら、大会2日間ともツーオンしている(山本)善隆が有利になる。それまでに決着をつけないと。そう思っていました。
プレーオフ1ホール目はフックラインを入れ損ねてしまった。だから、今度こその思いがより強まりましたね。
実は本戦で似たような地点からのバーディーパットをスライスラインに読み違えて外していた。実際はフックラインだった。それもあって、(プレーオフ2ホール目の)2打目を本戦と同じ場所に運んだなら前のホールのパット外しも効いて必ず入れられる、決め切れる自信はありましたよ」
5メートルのフックライン。打ち出して思い描いたラインにボールが乗り始めると海老原は両腕を突き上げた。カップインすることを確信したからだ。フックラインのウイニングパット。勝利への台本を見事実践しての大会3連覇を成し遂げた。
所属先の我孫子ゴルフ倶楽部で研修生や来場者とのラウンドを積極的に行う日々を過ごしている。「いつも芝の上からボールを打っているのは、試合では強みになる。ラウンドから遠ざかってはいけないよね。エージシュートは今年3回目。コースに出ず、練習場でボールを打つときは竹箒での素振りを20回は必ずしています」
自身初の同一大会3連覇。4連覇に向け、再び竹箒での素振りの日々が始まる。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)