午前7時30分。インコース第1組のオナーでスタートしたのは今大会最高年齢者である太田了介、80歳。35・41のトータル76、18位タイでホールアウトし、エージシュートをマークした。
前半は2バーディー・1ボギーの1アンダーで折り返した後半は4バーディー・1ダブルボギーとスコアを落としたものの自身、今季初のエージシュート達成に「2日前の練習ラウンドでも80を切っていたので、(本戦の)今日も無理せず回れば出るだろうとは思っていました」。太田はニコニコ笑顔を浮かべながらそう話した。
大きくスコアを崩した後半に関しては「少しバテてしまってようで、右股関節が痛み出し、右足を内側に絞り込めなくなってしまって。ダウンスイング以降の右足の蹴りができず、ショットが右方向へ飛んでばかりでした。同伴競技者に迷惑を掛けない一心でプレーしました」と太田。無欲のプレーで年齢より少ないスコア数を出せたと振り返った。
先月の4月28日に傘寿を迎えたが、現在でも京都府宇治市の笠取ゴルフセンターでレッスンをし、コースラウンドレッスンも精力的に行なっている。これまで育てた多くの教え子の一人が、ツアー通算6勝の平塚哲二だ。「最も手を焼いた教え子ですかね。飲酒を控えればもっと勝てるはず。年に数回しか会えませんけど、会うたびにそう言っているんですよ」とシード権再奪取に懸けている弟子に激を飛ばして続けているという。
「パットが入らないとパターを次々に替える。新しいパターにも目がない。平塚のあの悪い癖。実は師匠の私譲りなんです。今日は26パットでしたが、1カ月前に(練習場の)お客さんのパターを見て一目ぼれしてすぐに手に入れたんです。よく入ってくれました」。
日頃、教え子たちに指導しても「口だけ」だとは言われたくない。自らが試合で実践し、好成績を挙げることが、何よりもの教えの実証となる。「80歳を迎えてもお陰様でこうしてゴルフが出来ている。今は、その恩返しに(ゴルフの)知恵だけでも教え子たちに分けてあげたい」。明日もエージシュートを出したい。太田は最後にそう言ってクラブハウスを後にした。その背中は自信に溢れていた。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)