「最終組の選手は横綱級ですし、僕なんかは前頭、いや十両かな。緊張から決して良いゴルフはできそうにありません。それでも、パーをしぶとく積み重ねて行きますよ」。3試合前の第4回福岡シニアオープンゴルフトーナメント第1ラウンド。首位に1打差の2位タイにつけた斎藤義勝は、そんな言葉を口にしたのだった。シニア初優勝の金星は挙げられず、前日マークした「66」より11打も多い「77」の大叩きを演じ、20位タイに急降下した。横綱に跳ね返され、土まみれの惨敗だ。
「最終組で回った経験--バタバタしたゴルフしかできませんでしたけど、でももう一度同じ経験をしてみたい。優勝争いの緊張の中で、最終組気分で回ってみたいと思っています」。緊張感に押し潰された斎藤が再びチャンスを自ら引き寄せた。出だし3ホールは2メートル前後のパーパットをしぶとくねじ込んでパーセーブし、ショットの落ち着きを取り戻し、波に乗った。4、5番ホールで連続バーディーを決める。7番ホールで寄らず入らずのボギーを叩いたものの、その後はパーをセーブし続ける。後半9ホールは3バーディー、しかもノーボギーだ。「ミスなしのゴルフが出来ました。バーディーを取ったホールはメモを見ないとわからないほど必死のラウンドです」と斎藤の顏から笑みがこぼれることはなかった。
最終戦を迎えて賞金ランキングは54位。同50位以内に食い込んだならファイナルQT出場資格を得られる。「たとえ万が一、優勝しても賞金シード枠には入れません。それだけに50位以内にはぜがひでも入りたい。その一心なんです。でも、優勝したら来季1年間のシード権は得られますけどね」と最後は苦笑いを浮かべた。
「福岡シニアでの経験は無駄にはしたくないし、優勝を意識しての緊張プレーが今度はどうなるのかも楽しみです。リベンジなんて、そんな大それた思いはまったくありませんが、後悔だけはしたくない。自分のプレーに集中し続けるのが明日の目標です」。斎藤は自分に言い聞かせるようにそう答えて、練習場の打席に向かった。8位以内の成績を残したならファイナルQTへの道は明るく照らされる。最終戦の最終ラウンド18ホール。今季最後の斎藤の勝負が始まる。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)