タイの先輩・後輩が、優勝そして賞金王をかけた「最終組直接対決」になる。
先に通算6アンダー3位でホールアウトした賞金ランク1位のプラヤド・マークセン(53)。「今日はパターを替えたのがよかった。グリーン上にスパイクマークがあるので、重たいパターにした」という作戦がうまくいった。
2アンダーの8位からスタートして1番でバーディー発進し、3番でOBにしたもののボギーで切り抜ける。5番、残り150ヤードの第2打。「9番アイアンで打った。カップの20~30センチ手前に落ちてワンバウンドで入った。どうして入ったのか不思議」というイーグルで波に乗った。
7、8、10番と取って7アンダーまで行った。インで2ボギーを打ち、最終18番で6メートルを入れてフィニッシュ。その時点で、首位に立っていたタワン・ウィラチャン(52)は11アンダーに伸ばしていた。
マークセンはこの試合が今年のシニア最後の試合。4年連続賞金王を目指しているが、賞金ランク2位のウィラチャンとは約1144万円差。優勝賞金は1400万円なので、優勝されると自分の成績次第では抜かれる可能性がある。「でも、5位以内なら抜かれない。やっぱりNO.1にはなりたい」と、しっかり計算している。この試合での逆転を阻止し、1位のままで終えれば、ウィラチャンが残す2試合の結果待ちとなるが「そうなったらたぶん大丈夫でしょう」と余裕の笑みを見せる。
最終日の戦い方は?「OBはやりません。パー5のホールはすべてバーディーを目標にやる」。後輩には譲れない。
ウィラチャンは最終18番、第3打のアプローチを30センチに寄せて楽々バーディー。この日8バーディー、ボギーなしの64という驚異的なスコアで通算12アンダーと2位に4打差の首位に抜け出した。
「コースがよくて、グリーンがピタッと止まってくれるのでうまくいった」というように、ピンに絡めたショットが多かった。8バーディーのうち、1メートル以内が4つ。4番の8メートルが一番長かった。
ピンに絡めるショットを生んだのがドライバーの安定感だった。実は、これまで使っていたドライバーの調子が悪くて、細工をしたところ、ルールに適合するかどうか分からなくなった。現在R&Aに問い合わせているが、この試合では使えない。そこで「中古ショップに行って、1万4000円のドライバーを買ってきました。これがよかった。替えたおかげです」と微笑む。
優勝すれば、マークセン、賞金ランク3位の倉本の成績次第で初の賞金王が決まる。「僕は(マークセンに)追いつけないと思います。賞金王は考えない」。一応、先輩を立てたのだろうか。でも優勝は考えるでしょう?「プレーの調子はその時その時で変わる。でも、ミスがなければ、そのまま(優勝)でしょう」。
1万4000円の投資が、1000倍になって返ってくれば、一気に初の賞金王まで転がり込んでくるかもしれない。
(オフィシャルライター・赤坂厚)