6バーディー・1ボギー67、5アンダーのスコアカードを提出した伊澤利光。スタッフに促されて記者たちが待ち受けるエリアに歩を進めた。記者たちが選手を取り囲んでインタビューする「囲み取材」だ。「これをやると勝てないような気がするんですけど」と伊澤は冗談交じりにそう言って、集まっていた記者たちを苦笑いさせた。
スタートホールで3メートル距離のパットを決めてのバーディー発進。3、4番ホールで連続バーディーを奪取して好調さをアピールした。後半に入ってボールが木の根そばに止まっての不運なボギーに遭遇したものの、15番パー4ホールの2打目では、残り100ヤードをロフト52度のウェッジでカップそば30センチにベッタリ着けてタップイン・バーディー。最終18番パー5ホールでは残り230ヤードの2打目を5番ウッドでツーオンさせる。イーグル奪取はならなかったが、確実にバーディーを奪ってフィニッシュした。首位とは2打差の4位、明日は最終組でスタートする。
「ドライバーやフェアウエイウッドが、ちょっとしっくり来ていなかったのですが、先週の試合から硬めのシャフトにリシャフトしたらショットが安定しました。特にフェアウエイウッドがしっくり来て、ショットが良くなりました」。最終ホールのツーオン成功の要因の一つは、リシャフト効果があったのだ。
出身地の神奈川県から福岡県に転居して20年の月日が流れた。地元選手ではなく「(福岡県)在住と言った方が正しいかも知れませんけど」と伊澤。今大会では、3年半前から本格的にゴルフを始めた息子・丈一郎さん(17歳)を帯同キャディーにして臨んでいる。「本人が(帯同キャディーを)やりたいと言うので。距離感は違うし、パットのラインも僕がやっていますけどね(笑)。今日は良いお手本かどうかは分かりませんが、良いプレーが出来て良かったです」。
プロゴルファーである父親の姿をギャラリーロープの内側で見せることはできた。明日は目前で優勝シーンを見せつけられるか。「1回くらいかな、僕が逆転優勝したのは…。だから、すでにピンチなんですよ、追い掛けなければならない試合展開なので」と、伊澤はあえてマイナス材料を自ら掲げてみせた。シニア初優勝は「初の逆転優勝」だったでも、いいのかも知れない。