シニア入りし、1試合でも早く初優勝を飾りたい。そんな思いを抱いてシニアツアーデビューをしながら、未勝利のままの選手が一体どれくらいいるだろうか。
「初優勝に最も近い選手」と目されながら、月日だけが無碍に流れ去って行く。焦りは強まる。
「本当に勝てて良かったと思います」。ディフェンディングチャンピオンとしてこの大会を迎えた鈴木亨は、そう漏らした。グレゴリー・マイヤーとのプレーオフを制し、シニア入り3年目での初優勝を飾ったことで、開催地の福岡県福岡市在住の応援ファンを喜ばせられた。「いつも応援してくださる方々に、優勝する姿を見せられたので、少しは恩返しができたと思っています。レギュラーツアー時代は福岡市に来ても、一人で食事をして宿舎に戻り、そしてコースへ向かっていましたが、シニアVを飾ってからは友人や知人、顔見知りと夕食を共にし、楽しい時間を過ごしている。勝って本当に良かったと思います」 昨年は初優勝後、エリートグリップシニアといわさき白露シニアを制し、ツアー終盤戦で3勝を飾り、賞金ランキングは自己最高位の2位に輝いたのだった。
しかし、今年はまだ未勝利。賞金ランキング23位に甘じている。
「ゴルフの調子自体は悪くありません。たとえば前試合でもプロアマ大会でチーム優勝。スコア的に相当貢献したプレーをしながら、翌日の本戦が始まるとスコアを出せない。僕、第1ラウンドの平均スコアが良くないんですよ」。鈴木は出遅れが大きく響いていることを明かした。得意の最終ラウンドでの猛チャージも影を潜めている。「大きく出遅れてしまうから、まくるにもまくり切れない。追いつけない。そんなゴルフがこの一年続いている感じです」。
今年のシニアツアーはこの大会を含めて残り4試合となった。ゴルフ自体は好調、しかし第1ラウンドは不振。期待と不安を抱きながら、明日もスタートティーに向かう。「結果に一喜一憂せず、やるべきことをやるしかありません。自分との戦い!だと思っています」。再び、福岡市で祝杯を挙げたい。その思いは、これまで以上に強まっているのは確かだ。