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シニアツアー

〔コマツオープン2019・FR〕まさかの展開で優勝を手にしたウィラチャンが大会初V

2019年09月14日

 今季シニアツアー10戦目「コマツオープン2019」最終ラウンド。タイ出身のタワン・ウィラチャン(52)が65と猛追し、通算14アンダーでホールアウト。一方首位スタートのプラヤド・マークセン(53)が、順調にスコアを伸ばしていた優勝確実と思われていたが、17番パー4で「8」をたたくというまさかの大波乱。結局14アンダーでならんだマークセンとウィラチャンがプレーオフへ突入。1ホール目でウィラチャンがバーディーを決めて大会初優勝。シニア通算2勝目。

 まさかの展開が、38年来の友人という2人のプレーオフを生み出した。通算14アンダーで並んだタワン・ウィラチャン(52)とプラヤド・マークセン(53=ともにタイ)。18番パー5でのプレーオフは、ウィラチャンが3メートルのバーディーを沈め、1.5メートルをマークセンが外して決着した。

 優勝会見には、なんとマークセンも同席。微笑みを浮かべたウィラチャンは「追いつけるとは思わなかった」と、マークセンを見た。

 最終組マークセンの4組前でウィラチャンは回っていた。最終18番をバーディーで上がり、この日8バーディー、1ボギーの65。通算14アンダーでフィニッシュした。その時点でマークセンは17アンダーで独走していた。マークセンのゴルフをだれよりもしっているのがウィラチャン。ロッカールームで後片付けをしていた。そこに「呂文徳さんがきて(マークセンがスコアを落としたことを)教えてくれた。クラブハウスのテレビ(モニター)をみて、知りました」と振り返る。

 マークセンが17番で「まさか」の大たたきをした。「今日はドライバーがずっとよかったので、なぜOBになったのか、分からない」。第1打を左にOB。打ち直して、第4打。持ったのはピッチングウエッジ。「去年も同じようにシャンクした」という。右にOB。まさかのOB2発でこのホールのスコアは「8」。通算13アンダーとウィラチャンに逆転された。

 クラブハウスのモニターでウィラチャンが観戦する中、マークセンは18番で第3打を奥のラフから寄せてバーディー。追いついた。タイでジュニア時代の15歳ぐらいからずっと一緒にやってきた友人同士のプレーオフに突入した。ここでも「まさか」が起きる。

 18番での1ホール目、第2打でグリーン左のラフから先にマークセンがアプローチをしてピン上1.5メートルに。ウィラチャンはグリーン手前の深いラフで距離感が合わず、ピン手前3メートルと寄せきれなかった。先に打ったウィラチャン。マークセンは「いつも一緒に練習ラウンドをしているし、入れると思った」という。その通りになった。ウィラチャンは「(マークセンも)入れると思った。もう1度プレーオフに行くつもりだった」という。マークセンは打った瞬間、体を起こして歩き出した。ミスをした時の行動だった。カップの右を通り抜けた。「びっくりした」とウィラチャンは振り返った。

 タイ語の通訳もいたが、ウィラチャンのゴルフを一番知っているマークセンが、優勝会見に同席した。

 ―これまで2人でプレーオフをしたことは

 ウィラチャン  何度かあります。アジアのツアーとか。日本では初めてです。

 -どちらが強い

 ウィラチャン  あっち(とマークセンを示す)。

 マークセンもニコニコしながら聞き、時折2人で会話を交わして確認する。勝者と敗者が同席する珍しい光景だったが、マークセンは「ハッピー。友達が優勝してうれしい」といい、ウィラチャンも「一緒に居られてうれしいです」と笑った。38年の付き合いの中でけんかしたことがないという。

 1歳年下のウィラチャンはマークセンを頼って日本ツアーに参戦した。昨年福岡セヴンヒルズで初優勝している。練習ラウンドではいつも一緒で、日本のコースへのアドバイスを受けてきた。最近では「私はショートパットの練習が好きなんですが、(マークセンから)ロングパットの練習をした方がいいとアドバイスを受けていた。この大会でもロングパットが入りました」という。この日は12番で10メートルほどのバーディーを決めた。日本での「師匠」の言うことを聞いた成果だった。

 ウィラチャンは8月27~30日に行われたPGAプロテストを受験、19位タイで見事に合格した。12月の講習会を経て、来年1月1日付けで日本PGA会員になる。「コースも難しくて大変でしたが、PGAのメンバーになれてうれしいです。日本でずっとプレーしたいと思っています」と、これからも日本でのプレーを希望している。

 日本の好きなところは?「焼き肉がおいしい。昨日も焼き肉を食べてパワーをつけました」。その回答に、マークセンが爆笑。今後もこの2人が日本勢にとって「壁」になりそうな気配だ。

(オフィシャルライター・赤坂厚)