通算8アンダー単独首位からスタートしたグレゴリー・マイヤー(57)。前日は好調パットのお陰でバーディーを量産し、2位には3打差を着けて最終日を迎えていた。「安全運転なんてしていられないよ。ここに(出場して)いるオジちゃんたちは、みんな怖いからね。後ろからバンバン(猛追して)来るからね」。自らがスコアを伸ばし続けなければ、優勝は手に出来ない。バーディー合戦が繰り広げられる。それだけに1ホールでも早くバーディーを奪取して、逃げ切り態勢を固めたい思いが強まる。
それもあってかマイヤーはスタートの1番ホールで、ティーショットをフェアウエイ左サイドに大きく曲げる。トラブルショットの洗礼から幕を上げた。
「昨日とは違ってショットがブレてばかり。でも、我慢してパーセーブを続けていたなら必ずチャンスはやって来る。そう自分に言い聞かせてプレーしました。ボギーを打つとガックリ来るからね。アプローチが良かったから何とかパーは拾えました」とマイヤーはこの日のラウンドを振り返る。顔から汗が流れ落ちる。冷汗は、すでに流し切っていた。
「去年の大会では、パー5ホールで取りこぼしが多かったので、まずはパー5で絶対バーディーを取るようにしました」。パー5計3ホールで確実にバーディーを奪ってスコアを伸ばした。最終18番パー5ホールを迎えた時点で、通算12アンダー。2位とは1打差。「とにかくティーショットをフェアウエイに運ぼうと考えたけど、パーフェクトな当たりが出ました。ツーオンするには距離があったので、2打目はレイアップしました」。
3打目はピンまで35ヤード。グリーン右サイドのリーディングボードで順位を確認する。「ピン手前に乗せたならパットは上りラインになる」と読み、サンドウェッジで放つ。ボールは思い通りのポジションに乗った。それを2パットで沈め、2日間首位の「完全優勝」を4バーディー・ノーボギー68のゴルフで決めた。今季初優勝、シニアツアー通算3勝目を飾ったマイヤーは賞金ランキング18位から7位に急上昇。「去年は賞金ランク3位で、全米プロシニア、全米シニアオープンに出場することができました。もう一度出たい。だから、少しでも賞金ランク上位に行きたい。シニア賞金王? そのチャンスは作りたいよね」。マイヤーはニタリと笑った。「この優勝は何よりも奥さんが喜ぶと思う」と言って満面の笑みを浮かべたのだった。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)