最終18番パー5ホール。最終日のピン位置は手間から12ヤード、右から5ヤード。「最終ホールの風向きはフォローになると予想されたので、このピンポジションならティーショット次第でツーオンが可能。しかし、グリーン手前にマウンドがあるのでアグレッシブなショット力も問われる。シニア選手の実力ぶりをギャラリーの皆さんには楽しんで頂けるだろうし、アプローチを寄せ切ったり、パットをねじ込んだりした時の選手のパフォーマンスを観戦している方々にも見て頂けるはず」
コースセッティングアドバイザーを務めた田中秀道は、そんな思いを込めてこのピン位置を決めたのだった。
最終日、前半でスコアを4つ伸ばしたプラヤド・マークセンが通算12アンダーで首位を独走。2位の谷口徹に4打差、倉本昌弘には5打差を着け、独走態勢に入った。しかし、サンデーバックナインに入って急展開を迎える。倉本がイーグル奪取、谷口は連続バーディー。そんな猛追のプレッシャーからかマークセンは2ボギー後、4パットによるダブルボギーで首位から陥落。優勝争いは谷口と倉本の一騎打ちとなった。
両者ともに通算11アンダーでフィニッシュ。勝負の行方は18番パー5ホールでのプレーオフへ--。
谷口のドライバーショットはフェアウエイをキャッチした。一方の倉本はラフに捕まった。「ラフからはツーオンはない。グリーンセンター狙いで確実にツーオンさせよう」。谷口はそんなショットイメージを頭の中に描いてアドレスに入った。ピンまで220ヤード強。手にしたユーティリティークラブをしっかり振り抜く--はずだった。
「16番ホールのバーディーパットが入りそうで入らなかった。あともう一つ入っていれば勝てるなという思いはあったんですけどね。ここ最近調子が悪く、課題にしていたショットが今日はうまく打てていたので良かったです。でも、プレーオフの2打目は雑念が入ったのが悪かった。ダウンブローにボールを捕らえるつもりがダフってしまって…」
谷口はグリーン手前にボールを運ぶだけに終わり、3打目のアプローチの際にはショットイメージをうまく描き切れず、ピン奥に乗せるだけにとどまり、バーディーパットはねじ込めなった。倉本がバーディーパットをウイニングパットにしたことで、谷口の今季シニア初戦は、昨年の日本シニアオープンと同じ2位に終わったのだった。
「開幕戦で倉本さんは手嶋(多一)にすんなり勝たせてあげたのに、僕には……。最近はいいショットが打てていなかったですけど、良いショットが打てるようになってきて自信がつきました」。
負け試合となったが、次につながる収穫は手にした。次のシニアツアー出場予定は白紙だそうだが、「出たいなとは思っています」。
3度目の正直、シニア初優勝はすぐそこだ。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)