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シニアツアー

<富邦仰徳シニア杯・FR>溝口がプレーオフを制しシニア5年目で念願の初優勝

2019年04月28日

 シニア5年目、溝口英二(54)が、念願のシニア初優勝を飾った。

 大会最終日。眩しい太陽の下で、朝7時30分から第1組がスタートを切った。このまま順調にスタートするかと思われたが、9時頃から冷たい風が吹き、雲行きが怪しくなってきた。だんだんとコースには重い霧が立ち込めて、視界不良になる。10時08分、競技は一時中止。その後、天候の回復が見込めないため、11時30分には最終ラウンド中止が伝えられた。しかし第2ラウンド終了後の順位には崎山武志と溝口英二がトップで並んでいるので、優勝決定のためのプレーオフが行うと告げられた。

 プレーオフ1ホール目。崎山は2オンできず、アプローチで約2メートルのパーパットを残す。一方溝口は、2オンで3打目80センチに寄せた。しかし、溝口が短いパーパットを外してボギーにしてしまい、崎山もボギーで分ける。

 プレーオフ2ホール目。溝口のセカンドショットはグリーン奥のカラーへ。崎山のセカンドは、グリーン手前を捕らえる。溝口のパーパットは残り2メートル。ハウスキャディーのアドバイスもうまく噛み合って、これを先に沈めてパー。その後、崎山が寄せきれず、1.5メートルのパーパットを外し、その瞬間に溝口のシニア初優勝が決まった。

 プレーオフで負けた崎山は「残念の一言です。へたくそでした」と唇をかむ。「グリーンが重たいのはわかっていました。打たないといけないと思っていたのですが、ひっかけましたね。シニアツアーでのプレーオフは2戦2敗。精神的にもっと強くなって、ショットでも自信もって打てるように」。崎山のこの悔しさは、今シーズンの中で、きっと喜びに変わると信じたい。

 シニア初優勝を飾った溝口は、プレーオフを振り返り「1ホール目で80センチのパーパットを外して、『負けた』と思いました。まだ負けてないのにね。もともとネガティブ志向なんですよ。1ホール目は分けられたのですが、もっとたくさんホールが続いたら、アドバンテージになるかもと思って、とにかく次のホールに進みたかった。だから2ホール目の2メートルのパットも、先に沈められてホッとしていたのに、崎山さんが1.5メートルを外して、まさかの優勝。シニア入りしてから、ずっと勝てないと思っていましたから・・・いつ優勝できるのかなというのが本音でした。それがこんな形で優勝が舞い込んで来たなんて、本当に嬉しいです。ゴルフって、最後までわからないものなんですね」としみじみ話した。

 溝口はレギュラーツアーで活躍した選手として、華やかにシニアデビューを飾るも、成績を残せず、優勝に結びつかない年月が流れた。「やっぱりこのくらいしか出来ないのかな、と思う反面、こんなんじゃダメだと思っているプライドもあって。僕のプロゴルファーという人生は、自問自答しながら、葛藤を繰り返しているんだと。シニアデビューしたときは、何も準備なくスタートしたから、優勝までが遠回りになったのかもしれませんね。苦しいときが何年も続きましたが、勝てたことは大きな経験になりました」。

 思ってもみなかった、台湾でのシニア初優勝。溝口は40歳を過ぎてから、アジアンツアーに約5年挑戦し、シード選手として活躍していたという。「世界に挑戦することが楽しかったんでしょうね。旅の計画もさっさと自分で決めてね。そうやって、台湾含めアジア各地を回り、いろんな経験をさせてもらいました。台湾の芝は難しい。だからこそ、勝負しがいがある。まさか、今回は勝てると思っていなかったので驚きもありますが、改めて振り返ると、台湾で優勝した意味があるんだと思います。身近な外国。手ごわいコースだけど、面白い。もっと台湾が好きになりました」と、溝口はようやく肩の荷を降ろした。

 今季シーズンも開幕から腰痛に悩まされ、この試合にも不安を感じていた。そんな気持ちで向き合った最終日の予期せぬ嬉しい結末に、溝口には安堵と万感の笑みが広がっていた。

 「来年もその先も、まだまだゴルフで戦いたい」。