秋葉真一(53)が逆転でこの大会3年ぶり2度目の優勝を果たし、シニアツアー4勝目を挙げた。第1ラウンド10アンダーで首位の伊藤正己(63)に5打差でスタート。伊藤が崩れて混戦になる中、ボギーなしの5アンダー67をマークして通算9アンダー135で勝利を手にした。1打差の2位にはシニアルーキーで2戦目の桑原克典(50)が入り、伊藤は通算6アンダーにスコアを落として6位に終わった。
本人も「まさか」の優勝に笑いが止まらない秋葉を、周囲が冷やかす。ネタは4月27日に予定されている利枝夫人の出産予定日。女の子の予定と皆知っており、「子供の名前は『ノジコ』だろ」「電子でもいいんじゃないか」…秋葉も苦笑いしながら相槌を打っている。
「この大会で生活させてもらっていますから」と冗談とも本気ともつかない縁がある。2016年の第1回大会で優勝。その直後の27日に次男が生まれた。そして、今回のまさかの逆転劇。今回は二男と同じ誕生日になる可能性がある。「この大会には足を向けて寝られない」と笑った。
どんな逆転劇だったか。首位伊藤に6打差の4アンダーからのスタートで「崎山さん、桑原克っちゃんと3人で楽しくやろうと。優勝なんて、本当に考えてもいなかった」という。
周りのスコアもよく分からないまま、アウトで3つ伸ばし、インに入る時点で上が落ちてきているのは分かった。12番で9アンダーにした桑原克についていく。「12番パー5で取れなかったので、だめだろうとは思っていました」という。流れが来たのは15番パー5。「3打目の距離を間違えて」ピン手前12、13メートルのバーディーパットが入って8アンダーに。「そこで克ちゃんがチャンスを外したので」と13番ボギーにしていた桑原克と並んだ。続く16番で1.5メートルにつけて連続バーディー。最大5人いた8アンダーグループから抜け出す。
「17番からはドキドキしてやってました」と優勝を意識した。最終18番では第2打で「風が分からなくて、1つ大き目のクラブ(6番アイアン)にした。3年前の優勝の時と同じような奥のピンで、その時は1つ小さめ(8番アイアン)で打ってグリーン下の段に乗って3パットしたから。大きかったけど、ラフで当たりが悪くて、距離がちょうど合ったって感じになった」と振り返る。ピン奥6メートルほどについた。ちゃんと当たっていたらグリーンオーバーしていた可能性もある。この大会での運があるようだ。桑原克のバーディーパットが外れ、秋葉は「見ないようにしていたんだけど、ボードが目に入っちゃって、あれ、一番上だと思った」と、2パットのパーに収めた。後続の金鍾徳らが伸びず、優勝が転がり込んだ。
一昨年8月のマルハン以来の優勝。昨年は不振で未勝利、賞金ランクも22位に甘んじた。「苦しかったです。ショットが良くなくて、OBが出たり、何をやってもうまくいかなかった」と振り返る。オフからは初めてジムに通うようになり、気になっている左股関節など中心に1日2時間ほど鍛えてきた。
今季開幕戦金秀シニアに行った時に、テレビでメジャー大会マスターズの中継を見た。「若い選手たちだけど、みんなバーンと思い切って振っている。自分はスイングばかり、形ばかり気にしていた。これじゃだめだと思って、この大会の練習ラウンドから振るようにしたらいい感じだった」と、気づかされた。
久しぶりの美酒に「ホッとしています」。トンネルを抜けた。あとは子供が無事に誕生することを待つ。そして今年の目標として「日本シニアオープンが地元(埼玉)の日高CCであるので、コースを回ったこともあるし、マークセンに4連覇されるのも、ねえ」。大きなタイトルを狙ってみる。
(オフィシャルライター・赤坂厚)