63歳の伊藤正己が、11バーディー、1ボギーの10アンダー62をマークするトーナメント・レコードでエージシュートを達成し、首位に飛び出した。9番から5連続、16番からは3連続のバーディーラッシュをみせた。63歳で62のエージシュートはツアー最年少&最少スコアになった。5打差の5アンダーで岡茂洋雄(50)、金鍾徳(57=韓国)、桑原克典(50)がつけている。
伊藤はガッツポーズを繰り返してホールアウトした。「自分でもびっくり」「『どうしちゃったの?』って聞かれると思って考えたけど、どうしちゃったんだろう」「笑っちゃうほどうまくいったぞ」…次々と、興奮気味に言葉が出る。
「とにかく、エージシュートは飛び上がるぐらいうれしい。今日、こんなことが起きるなんて、夢にも思わなかった」。
11バーディーを見てみよう。1番で右2.5メートルについてバーディー発進から始まった。3番では「今日一番長いのが入った」と10メートルを入れた。7、9番は「OKについた」と、ショット好調でインに入る。
10番で2メートル、11番でピン奥から3.5メートル、12番パー5では第2打でカラーまで運び、80センチにつけた。13番で2.5メートルを入れて5連続バーディーとした。
14番でグリーン右に外してボギーにする。続く15番パー5でチャンスを外して。快進撃もここまでかと思われたが、バーディーラッシュ第2幕は上がり3ホール。16番で2メートル、17番2.5メートル、そして最後は18番。奥3.5メートルを沈めて、右こぶしでガッツポーズ。ギャラリーに拍手で迎えられて両手でガッツポーズ。うれしさを全身で表現した。
少し落ち着いてからの会見。「パットがすごかった。ショットも、グリーンを3回しか外さなかったし。不思議なんですよ。左から寄って行けばいいなというイメージで打ったら、実際にできちゃった」と、この日は何をやってもうまくいった。「エージシュートも惜しかったことはあるけど、できるんやねえ、こんなことができるとは思わんかった」と、首をひねった。ゴルフの「妙」なのだろう。
2006年にシニア入りし、8年連続シード権を確保したが、優勝には縁がなかった。「それから5年ほど休養していまして(笑い)」と、昨年までは試合に出られる数は少なくなった。実はその「休養」の間に「休まないように、抜かないようにしてきた。毎日、少しでもクラブを握るようにね。朝、100発ぐらい打つとか。それはずっと続けている」と、地道に積み上げてきた。
今年、3月のツアー最終予選会で10位になってこの大会に出場した。「接戦で1打落としたら、ツアー出場が確約される10位内を外れていた。最終ホールで1.5メートルのパーパットが入ったから、いまここにいて、エージシュートができた」という。
何か変わったことがあったのだろうか。「うーん、特にないかな」といった後すぐに「孫ができて…1歳3か月になる。それからやね、毎日が高ぶっているというか」と、孫の存在が気持ちを強くした。「思い切って打てるようになったね。飛ばない私が、いまはみんなと同じような距離に行くんでね」と、笑った。
2位に5打差をつけての最終日。レギュラーでもなかったツアー初優勝がかかる。「バラバラになってもいい。欲はない。これで(優勝が)ついてくれば、万々歳。そう簡単に行かないのは覚悟してますけど」。
ツアー最年少63歳で最少スコア62でもエージシュートに、他の選手たちもスコアボードを見て驚いた。最終日もその位置で終わりたい。
(オフィシャルライター・赤坂厚)