「いわさき白露シニアゴルフトーナメント」の最終ラウンド。1アンダー6位スタートのグレゴリー・マイヤーが66をマークし猛追。一方で首位2打差3位の溝口英二がスコアを3つ伸ばし、通算6アンダーでマイヤーに並びプレーオフへ。1ホール目で溝口がバーディーを決め、シニア通算3勝目を挙げた溝口は賞金ランキング4位に浮上。来週の金秀シニア沖縄オープンゴルフトーナメントがシニア最終戦となり、今年の賞金王が決定する。
通算6アンダーで首位に並んだ溝口英二とG・マイヤーとのプレーオフ決戦は、18番パー5ホールで行われた。同1ホールで2・5メートルのバーディーパットを沈めた溝口が、昨年の富邦仰德シニア盃以来のシニア通算3勝目を飾った。
前日同様に強い風がコースを襲い、選手たちを苦しめる。強風下でのゴルフを強いられた前日の第2ラウンドで2バーディー・ノーボギーのゴルフをした溝口は、最終組からのスタート。首位の手嶋多一とは2打差があった。「こんなに強い風では誰が勝つか分からない状況でしたし、ホールを進むほど風は強まりばかりでした。欲張らずにプレーすることに徹しました」と溝口は最終日のゴルフを振り返った。
無欲のプレーが奏功する。前半でスコアを3つ伸ばし、前日からの27ホール連続ノーボギーゴルフを継続させた。しかし、後半に入って10番パー4ホールでのボギーで途切れる。それでも「この風ならボギーを打っても仕方ない」と落胆はしなかった。次のホールからノーボギーゴルフをリスタートし、16番パー4ホールを迎えた。フェアウエイ右ラフからのウェッジショットは硬く、速いグリーンに弾かれ、グリーン奥の崖下に転がり落ちた。ボール地点からはピンフラッグの上部しか見えない。ボールのライも良くなかったことで開き直って打ったロブショットはカップ8メートルにようやく止まる。「ボギーでも仕方ない」。
そう考えた一方で「このパーパットを外したら何位まで順位を下げるのだろう」とも思ったという。「せめてベストテン、できればベストファイブに入りたい」一心で打ったパーパットがカップに消えた。パーセーブ成功。「あんなに長いパットが入ったのは第1ラウンドのイーグルパット(8番ホール)以来でしたね」。
溝口は最終18番パー5でバーディーを奪取し、すでにホールアウトしていた通算6アンダー首位のマイヤーに並んだのだった。4バーディー・1ボギーの67。2日間続いた強風下でのゴルフで、ボギーを一つしか打たなかったのだ。
プレーオフ1ホール目。マイヤーの3打目はグリーン右手前のバンカー。溝口の3打目はグリーン左手前のガードバンカー。遠球先打。マイヤーはカップ4メートルに寄せたのを確認してから、溝口はバンカーショットに臨んだ。16番ホールでのロブショット同様、ピンの根元が見えない。「ピン方向が(明確には)わからず、距離感もつかめないショットでした」。寄らなくても仕方ない。この場面でも溝口は無欲のプレーを貫いた。
昨年4月の富邦仰德シニア盃では、プレーオフで崎山武志を下してシニア通算2勝目を挙げた。その後、腰痛が収まり、気持ち良くクラブを振れるようになってから、右脇腹に痛みが走った。剥離骨折。クラブを振らずに休養するのが最高の良薬となった。
「もともと練習はしないタイプですが、脳だけはゴルフをしたがる。試合の1週間前にラウンドするくらいです」と溝口。コロナ禍のお陰でトーナメント出場回数が減ったことも幸いした。
賞金ランキング25位で迎えた今大会は「ベストテン入り」を目標しての出場だったが、プレーオフに加わる予想外の展開。「2位でも構わない。優勝したいと気負ったのでは体が動かなくなりますからね」。最後の最後まで無欲のプレーに徹した結果、プレーオフ1ホール目の3打目、バンカーショットをピンそば2・5メートルに着けることができた。マイヤーは4メートルのバーディーパットを決め切れなかった。「これを決めたら優勝か--そう思ったら楽しくなりました」。2・5メートルのバーディーパットをキッチリ沈めた溝口。この1勝で賞金ランキング4位に急浮上し、最終戦での逆転シニア賞金王のチャンスをも手にしたのだった。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)