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シニアツアー

【コスモヘルスカップ/FR】水巻善典が逆転でシニアツアー3勝目の優勝を掴む

2020年11月14日

  「コスモヘルスカップ シニアトーナメント」の最終ラウンド。5アンダー2位スタートの水巻善典(62)がスコアを3つ伸ばし、2位に2打差をつけ通算8アンダーで逆転。優勝賞金360万円を獲得した。2016年福岡シニアオープン以来、シニアツアー通算3勝目を挙げた。初日首位の寺西明は通算5アンダーの7位タイで大会を終えた。

 「吾唯足知」。4つの漢字に共通する部首「口」を真ん中に、口の周りに残る部首が取り囲んでいるものを見たことがあるだろうか。「われ、ただ足るを知る」。仏教の言葉で「吾唯知足」という言葉から来ている。京都・龍安寺の「つくばい」という茶室に入る前に手を洗う手水鉢に描かれているのが有名だが、神社や寺で見たことがあるかもしれない。

 「われ、ただ足るを知る」。還暦を越えた水巻善典(62)はそんな心境なのかもしれない。「自分にできることが分かってきたから、余裕があるんでしょうね。やっとゴルフを始めたって感じですかね」。優勝会見で、そういって笑った。

 首位に1打差の5アンダーからスタートした最終日。このコースでは一番難しい風向きという北西からの風が吹き、時折強くなる。ティーグラウンドとグリーンでは全く違う方向に吹くこともある。そんな条件で、上位陣が伸び悩んだ。首位だった寺西明が2番で池に入れてボギーとし、そのホールで6メートルを入れた水巻が首位に立つ。しかし、その直後の3番で左のエッジからボギーにするなど、水巻に限らず、6アンダーに行く選手が何人出てもそこから抜け出せない展開になった。

 

 12番で左4メートルをいれて7アンダーにしたが「抜け出したと思ったので、安全に行こうとして13番で左に落としてボギー。バカですよね」と振り返る。14番で左5メートルを入れて再び7アンダーに。その時点でも、ホールアウトした篠崎紀夫はじめ、6アンダーが1つの壁になっていた。勝利を確信したというのが15番。左3メートルを入れて8アンダーに伸ばした。「マイヤーが外し、寺西が外したところで『勝ったな』と思いましたね。そこから優勝スピーチをどうしようか考えていましたから」と笑う。

  その通り、前の組からも6アンダーの壁を破る選手が出ず、水巻が2016年福岡シニア以来4年ぶりのツアー3勝目を手にした。

 所属する兵庫・鳴尾GCでの日本シニアオープンに向けて、最近ではないぐらいの練習と準備をしてきた。その中で、3年前に手に入れたアイアン、若いころに使っていたマッスルバックの重たいアイアンを練習で打ったところ「気持ちのいい当たりだった。振れる、浮く、飛ぶ。やっぱりゴルフは気持ちよくやりたい。もう62歳なんだし。重たいんで、最後はバテバテになるんですけどね」。気持ちのよさがゴルフをする「目的」の1つと思っている。

 

日本シニアオープンでは「力が入りすぎて」と17位に沈んだが、クラブ、技術とも、その時の貯金が生きている。「いまなら、いつ回ってもいいスコアが出そうな感じがするんです」という。その根拠は?「自分ができるところがちゃんとわかったということかな。若いころは歯を食いしばってやっていたけど。30勝とかする人も、僕とは違うだろうけど、そういう何か、ここまでできるというのが分かってやっていたんだろうなって思います」。やっぱり「われ、ただ足るを知る」の境地らしい。

 優勝して一番喜んだのは、主催者のコスモヘルスの製品、予防医療フルセットが優勝副賞になっていたこと。「賞金より、モノに弱いんですよね」と笑った。そして「また奥さん(久美さん)に怒られる。いつも一緒に来ているのに、たまたま来ていない大会でまた勝っちゃったからなあ。医療器具で許してもらおう」。そんな使い道も考えていた。

(オフィシャルライター・赤坂厚)