第30回日本シニアオープンゴルフ選手権(JGA主催)の第3ラウンド。寺西明(54)はスコアを2つ落としたが、通算4アンダーで首位をキープ。2打差の2位タイに岡茂洋雄(51)、川岸良兼(53)の2名。続く首位と3打差の1アンダー4位タイには藤田寛之(51)、篠崎紀夫(50)、鈴木亨(54)が続いている。寺西との4打差に8名がいる混戦模様となってきた。
単独首位を守ったが、第3ラウンドはスコアを2つ落として通算4アンダーとした寺西。第2ラウンドまではボギーが1つだけだったが、第3ラウンドではトリプルボギー1回、ダブルボギー1回、ボギー1回と乱調気味。第2ラウンド終了後の会見で「いつかは出てしまうかも」と話していたが、これまで我慢していたオーバーパーが、全部出てしまったことになる。
4番ホールのトリプルボギーは「自分の中ではダボまで許せたんですが、トリプルはさすがにがっかりでした。次の5番でバーディーが取れたので、結局はダブルボギーで収まった感じですね」と俯瞰する。大きなミスも受け入れる用意はあったが、9番ホールではダブルボギーにしてしまい、自分の中では開き直っていた。それはひとつ気付きがあったからだ。「前半のスイングは、ヘッドが少し遅れて入ってきていたので、上半身と下半身がうまく連動してスイングできてなかった」と気づくことができた。ナショナルオープン2日間終わっての首位というアドバンテージ。自分では気づかない部分があって、意識下で力んでいたようだ。
力みに気づいて修正してからは、後半のインコースに入ると14番パー5でイーグルも奪い、耐えて耐えて74ストロークでフィニッシュ。「鳴尾は4日間あれば、ボギー、ダボ、トリは必ず出る。第3ラウンドという、貯金のある時に出て良かった。いっぱい叩いた割には、上出来かな」。
トーナメントリーダーとして挑んだ第3ラウンドを振り返ると、どこか緊張していた部分もあったかもしれない。ただ寺西は「緊張することが好き」だと話す。
試合で良いスコアを出したいと考えると「緊張することもあるが、欲がでる。だからいいスコアを出すために練習する。欲があるからこそ、少しでも上手になりたい、いいスコアを出したい。そういう向上心が生まれるんです。49歳でプロゴルファーに転向できたからこそ、向上心が強くなってきた。だから、向上心があるうちは、最後まで闘い続けます」。シニア入りを目指してプロになり、その時から芽生えた欲が、現在の寺西を支えている。
寺西は、日々のゴルフに「ストーリーがある」という。ラウンドでスコアを重ね、その日のストーリ―を振り返り、完成したストーリーを味わう。ゴルフを好きだからこそ、新しい発想や挑戦心が生まれるのだろう。いよいよ迎える最終ラウンドに向けて「ノープランです。ムービングサタデーの内容、みなさんみてくれたでしょう(笑)。まだストーリーはイメージできていません。それでも、最終日はゴルフの原点に戻りたい。フェアウェイセンター狙いで、パーをとるのが精いっぱいかもしれないプレーかもしれませんが、このチャンスを楽しんで最後までやり切ります」。寺西が描く鳴尾の最終ストーリーは、ナショナルオープンの優勝に結びついている。