シニアツアー第3戦「
マルハンカップ 太平洋クラブシニア
」の第1ラウンド。シニアデビューの藤田寛之(51)が、9バーディー・1ダブルボギー65で回り、7アンダー単独首位に立った。明日の最終日はシニア初優勝に挑む。1打差2位には岡茂洋雄(51)、塚田好宣(51)が続く。大会は新型コロナウイルス感染症予防や熱中症対策を取り、有観客試合として行われ、1707名が来場した。
スタート前の練習では「何か、しっくり来ていませんでした。どこが?と問われても答えようのない何かでした」と藤田。シニア初戦を控えた前日。「緊張感から眠れなくなるかも知れません」。冗談とも本音とも受け止められる言葉を発していたが、実際は「ツアープロ歴の長さもあってか、すぐにグッスリ寝てしまいました」と藤田は話す。精神的な太さを感じさせる。
レギュラーツアーでは50歳過ぎの最年長組とあって「シニアツアーに早く専念してくださいよ」と後輩プロたちから揶揄され、シニアツアーに一歩足を踏み入れると「(シニアツアーに)来なくていいから」と冗談混じりにそう皮肉られる。「僕は本当に微妙な立場なんです。今朝は他所の家にお邪魔しているような感じで、(渡辺)司さんからは『場違いな人』と言われました(苦笑)。今日のスコアで僕の存在感を証明できたと思います」。
スタートの1番ホールからショットはピンに絡んだ。しかし、バーディーパットを決め切れない。2番ホールでも再現してしまった。3番パー5ホールで、ようやくシニアツアー初バーディーを奪った。爆発ゴルフの狼煙を上げる。6、8、9番ホールで着実にバーディーパットを沈め、前半で4アンダーをマーク。後半に入って11、13番ホールでもバーディーパットを決める。この時点でトーナメントリーダーに立った。
迎えた14番パー4ホール。ティーショットをフェアウエイ右サイドに曲げ、池越えの2打目はつま先上がりのラフからのショット。フェース面のトゥ側上部でヒットしてしまい、ボールは池に波紋を描いた。結局、このホールをダブルボギーとし、順位を下げた。独走態勢に入りかけて躓いた藤田だったが、続く15番パー4ホールで2メートル、17番パー3ホールで10メートル弱のバーディーパットをねじ込んで見せた。最終18番パー5ホールでは見事ツーオンしてのバーディーフィニッシュで、ギャラリーを喜ばせたのだった。
この日のゴルフを100点満点中、98点とした。マイナス2点は「池ポチャですね。反省材料があるので、それを師匠(芹澤)に確認したいです」と言って、藤田は練習場へ向かった。練習場の脇には芹澤のゴルフアカデミーがあり、師匠直々のスイングチェックをしてもらえる。「夢というほどではありませんが、師匠とかつての(レギュラーツアー時代の)ようにシニアツアーでプレーできて本当に嬉しいし、楽しいです。リーダーボードの一番上に自分の名前があるって、やっぱり気持ちいいです。明日もそれを守り通せたなら僕を応援してくれている人たちも喜んでくれると思います。期待に応えられるかな」。
「しっくり来ない」今朝のフィーリングをビッグスコアで振り払い、ラウンド後の練習で師匠にスイングをチェックしてもらった藤田。シニアデビュー初戦Vへの不安は、一掃された。明日の18ホールは、シニア藤田の存在感を大きくアピールするためにある。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)