6バーディー・ノーボギー66のスコアを提出した岡茂洋雄が、その時点でクラブハウスリーダーとなった。前日は豪雨のためにプロアマ大会のスタート時間が遅延したことから、その後に予定されていた練習ラウンドは急遽中止になってしまった。
「お陰で、ぶっつけ本番ラウンドでしたが、3パットせず、危なげなく回り切れました。ショットはそれほど良くはありませんでしたが、パットに救われました」と岡茂はこの日のプレーを振り返った。
今年2月から最新スイングと言われている「地面の反力を利用して飛ばす」GGスイングを試し始めた。自分流にとダウンスイング以降での右脚の絞り込みを強めた途端、右膝に激痛が走った。半月板損傷。4月のことだった。「膝はなかなか完治しませんよね。今大会の出場に向け、通院して注射を打って来ました」。
2010年11月。三井住友VISA太平洋マスターズの予選ラウンドのスタートティーに上がった。石川遼、今田竜二と同組だった。「前年大会覇者の今野(康晴)が欠場となり、ウエイティング1位だった僕に出場枠が巡って来たのです。あの時の緊張感はMAXでした。優勝は石川で、僕なんかは52位(タイ)でしたよ」。
それ以来の太平洋クラブ御殿場コースでのラウンド。 2年前の18年に全面改修工事を終えた同コースは、一変していた。「バンカーが以前より効いて、戦略性が一段と高くなっていました。バンカー手前に刻めばいいんですけどね」。残り距離が長くなるディスアドバンテージを抱えるが、実は岡茂には乗り越えられない「山」があるのだ。
「スタートホールはうまく打てました。2ホール目も。でも、3ホール目になって化けの皮が剥がれちゃいました。ドライバーショットを大きく左に曲げて…。運よく林から打ち出せて、パーパットが入ってくれてのパー。それ以降3番ウッドとアイアンでティーショットしました」。ドライバーイップスを岡茂は克服できずにいるのだ。「試合になるとドライバーが振れなくなるんです。今日も行ける所まで行こうと勇気を持って臨みましたが、3ホールが限界でした。明日も振れるホールまでドライバーでティーショットします。ダメだと感じたら今日と同じく3番ウッドとアイアンで攻めます」。
練習ラウンド仲間である伊藤正己のゴルフを間近で見て、悟った。「伊藤さんは飛ばし屋ではありませんが、しっかりスコアを作る。去年は62のトーナメントレコードをマークしてエージシュートを達成しています。飛距離よりもマネジメントが、2打目以降のショットがどれほど大切なのかと考えさせられたのが良かったです」と岡茂。シニアは飛距離という「力」よりも、2打目以降のショット精度の高さという「技」が奏功する。それをこの日は実現できた。「明日も今日のようなゴルフをすれば、藤田(寛之)に笑われないでしょう」。そう謙遜してみせたが、逃げ切りゴルフでシニア初優勝の高笑いと行きたい。