柳沢伸祐(54)が通算13アンダーで第1ラウンドの首位を守って、開幕戦優勝を果たした。朝は濃霧の影響で、計2時間10分の中断を余儀なくされたが、2位と1打差からスタートし、2番でバーディーを奪うなど前半で抜け出しての見事な逃げ切り。昨年広島シニアオープン以来のシニア通算3勝目。3打差の2位に篠崎紀夫(50)と河村雅之(53)が入った。
柳沢にとっては、忘れられない通算3勝目になった。コロナ禍の影響で「4月の試合がなくなり、5月がなくなり…このまま試合がなくなるんじゃないかと思った。半田会長(ISPS)が試合を開催してくれる運びになり、急に今年やれるという喜び、特別な3勝目ですね」と、優勝の喜びというよりは、神妙な表情で話し始めた。
無理もない。「今年は優勝しよう、平均していい成績を出そう」という目標で4月の開幕を心待ちにしていた。ところが次々と試合が中止・延期に追い込まれ、緊急事態宣言も発令。自宅で「巣ごもり」生活を強いられた。自宅にいるとテレビなどでの報道も目に入る。「多摩川河川敷の練習場の映像は、そんなに密じゃないのに横から撮って密になっているという映像が痛かったですね。危険と思われて、練習場に行きづらくなった。仕事なんですけど、ジレンマがあった。気分的にはコソコソ行っているみたいな」という。
ジョギングの際の飛沫もリスクがあるという報道に、いつもランニングを欠かさなかったところが「走りづらくなってしまって、どんどん気持ちが暗くなってしまった」と、自粛生活を振り返る。おかげで体重も5キロ増えた。
6月に入って今季ツアー開催の知らせに「元気になりました」と笑う。この大会に向けて先週、加瀬秀樹、崎山武志、秋葉真一と、このコースで2日間のミニ合宿を行った。「加瀬さんからアドバイスをもらった。ボールの位置とひざの使い方。錯覚に陥っていたんですね。右寄りにボールが入っていて、詰まって振り抜きが悪かった。ちょっとしたことがでかいんです。言われたとおりにやったら、心地よく振れて曲がらなくなった」という。
その効果がすぐに出たのがこの大会。第1ラウンド8アンダーで飛び出し、2位に1打差首位でスタートとした最終ラウンドでも2番でバーディーを取って、後続を突き放した。「1度も(首位に)追いつかれなかったのが大きかったと思う」という。6番でボギーにしたが、11番でこの日5つ目のバーディーを奪って通算12アンダーに伸ばした。このホールで河村が第2打75ヤードを直接入れるイーグルで「あわてて、河村のスコアを数えましたよ。2打差だった」と、初めて意識した。「16番で河村がボギーにしたところで3打差になったので、大丈夫だと思った」と、結果的には楽々逃げ切りの形になった。
当然だが、開幕戦優勝で賞金500万円を獲得して、賞金ランク1位。「実は室田(淳)さんに『今年は試合数が少ないから、年間賞金ランク1位になるチャンスだ』と言われて、もしかしたらそういうこともあるんじゃないかって」と、目がキラリ。「去年、落ちましたけど、全米シニアオープンの予選に挑戦した。賞金ランク4位以内になれば、来年の出場権が取れる。そこは視野に入れたい」と、明確な目標ができた。
自粛生活で体を休めたこともあってか、2017年、18年になったぎっくり腰から来る持病の腰痛はいまのところ不安はない。不安があるとすれば?「大会を開催されたことをうまくアピールできたらいいんですけど。こういう状況でトーナメントをやったとか、マイナスにとらえられないようになればいいと思います」。コロナウイルス感染防止対策をとって行われた今季ツアー開幕戦。世の中の動き、反応などを総合して「特別な」優勝を味わった2日間になった。
(オフィシャルライター・赤坂厚)