プロテスト合格者46名による「
第22回 日本プロゴルフ新人選手権大会 富士可児カップ
」の最終ラウンドは、7アンダーで古川雄大(フリー・23)と原田大雅(フリー・23)が並びプレーオフへ。8ホールに及ぶ戦いの末、古川が新人戦優勝を飾った。古川には優勝賞金100万円と、来年日光カンツリー倶楽部で行われる日本プロ出場権が与えられた。
初めて挑んだプレーオフに古川は「緊張しましたが、だんだんテンションが上がってきて、ずっと続けていたい、そんな気持ちの変化がありました。どっちが勝ってもおかしくなかったです。リスペクトできる素晴らしい勝負相手でした」。8ホールにも及ぶ、原田とのプレーオフを振り返った。
プレーオフは、10番ホールと18番ホールの繰り返しで行われた。1ホール目、古川は4メートルに付けたバーディーパットを先に決めた。「もしかしたらこれで決着かも」と思ったが、原田は2メートルのバーディーパットをしっかりと入れ返した。
続く3ホールをそれぞれパーとして、迎えたプレーオフ5ホール目。原田は6メートルに着けたが、難しいラインを読んでバーディー。古川は1メール強を決めてバーディーで分ける。6ホール目は両者パー。7ホール目では、セカンドショットを打つ前に、競技委員から「日没で決着がつかない場合は、ダブル優勝となります。但し、プレーできるところまでは実施します」と告げられた。勝負をつけたい二人はバーディーで次にチャンスをつないだ。
日没も間近になってきた8ホール目。2打目地点、再び競技委員より「日没のためこのホールが最後になる」と宣告があり、古川の頭の中は少し迷いがよぎる。「両者優勝でもいいかな、でもパーを取りにいく、ボギーもありえる。だけど無心で打ってみよう」。古川のセカンドショットは、ピン方向にまっすぐ向かい、グリーンを捉え、10センチという驚異のスーパーショット。一方で原田はグリーンエッジから10メートル強のパットだったが、あえなくカップを通り過ぎ、古川の勝利で幕を閉じた。「優勝が一人というのは、心が痛かった部分もあります。ダブル優勝でもいいのに・・・。だけど、いい経験ができました」。8ホールにも及ぶ初めてのプレーオフは、古川のゴルフ人生にも深く刻まれるだろう。
古川は大会2日間、朝スタート15分前にクラブハウスに到着した。ルーティンは人によって違うが、古川は練習はせず、ギリギリで出発する。競技前日に練習ラウンドで、試合に向けての自身の調子、そしてコースマネージメントを考え判断する。そして試合当日、起床直後にコンディションを確認し、練習するかどうかを決め、良ければストレッチだけ行う。「このコースはドライバーをフェアウェイにきちんと置きにいくことが大切。だから、必ずしも朝から練習場で球を打つ必要はないんです」。自分のペースを守るのがプロだという自負がある。
大学3年時に九州アマチュア選手権優勝、4年の時、日本学生ゴルフ選手権5位などの成績を収めている。大学時代を過ごしたのは熊本市。市内サンバレーゴルフプラザ練習場で、稗田貴彦コーチに出会った。ゴルフを始めたころのコーチは父親だったが、稗田コーチに見てもらうようになって、飛躍的に技術が向上し、成績に繋がっていった。「今回の優勝は稗田コーチ、そして、ずっとゴルフを見守ってくれていた父親のおかげだと思っています」。ゴルフの恩師である2人に、優勝という嬉しい報告を届けることができたのだった。
古川は今年の目標を「Abema TV ツアーで賞金王になる」と宣言していた。2020年シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の影響で試合数が減り、2021年までが1シーズンとなる。「2021年の試合で優勝し、賞金王になる目標はまだ諦めてない。早く1勝をあげたいという思いばかりです」。来年Abema TV ツアーで活躍し、再来年はレギュラーツアーに挑戦したい。最終目標は「世界ランキングをあげて、マスターズに出場し、そこで優勝すること」。プロとしての初優勝が新人戦。また一人ビックスターの誕生を予感させた。