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シニアツアー

〔いわさき白露シニア/FR〕鈴木が奇跡の最終戦優勝!ホームコースのいぶすきでシニア通算5勝目

2021年11月27日

 鈴木亨(55)が通算6アンダーで並んだグレゴリー・マイヤー(60)とのプレーオフを制し、今季初優勝、通算5勝目を挙げた。18番繰り返しで行われたプレーオフ2ホール目でバーディーを奪って、この大会2018年以来2度目の優勝となった。マイヤーは2年連続のプレーオフ敗退となった。この大会でシニアツアー全日程が終了。篠崎紀夫(52)が初の賞金王となった。賞金ランクにより、30人(ランキングは34位まで)が来季シード権を獲得、7人が初の賞金シード選手となった。

 百戦錬磨の鈴木にとっても、最終戦の優勝は「奇跡」だと思えた。

 スコアを伸ばしたマイヤーと、スコアを落とした鈴木。通算6アンダーで並んでプレーオフに突入した。18番パー5(508ヤード)の繰り返しで行われた。1ホール目、鈴木はピンチを迎える。2オンに成功したマイヤーに対して、鈴木は手前バンカーとグリーンの間のラフ。しかも洋芝のティフトン芝の中にすっぽりと沈んでいた。うまく出したが3メートル強のバーディーパットが残った。マイヤーはイーグルパットを外したがタップインのバーディー。入れないと負ける場面で「今日一番のパッティングができた」と、沈めて分けに持ち込んだ。

 

 2ホール目、マイヤーが第2打を右のバンカーに入れた。鈴木は手前のバンカーを避けて大きめに打ってグリーン奥に少しこぼした。行ってみると、またティフトン芝の上だったが今度は少し浮いていた。マイヤーは3メートルほどと寄せきれず、鈴木は「思ったより行ってしまった」と1メートル強。マイヤーは外し、鈴木が決めた。その瞬間、両ひざに手を当ててうつむいてしばらく動かなかった。いや、動けなかった。

 「終わった、勝った、もうやらなくていいって思って」と振り返る。終盤からは春から痛みやだるさがある右腕をずっとさすりながらのラウンド。体も、そして緊張感、集中力も限界だった。

 鈴木は首位でスタートしたが、1,2番連続ボギー。強風、しかも気まぐれな突風が時折吹くコンディション。5番パー5で「この大会一番のショット」と3番ウッドで2オンして3メートルのイーグルを決めた。これで乗るかと思いきや、その後の一進一退のゴルフ。「風でスコアが伸びなかったのが僕にとってよかったんだと思います」と振り返った。7アンダーの首位で迎えた17番パー3で3パットのボギー。その直後に前を行くマイヤーが最終18番でバーディーを奪って6アンダーで並んだ。正規の18番で取れず、プレーオフにしてしまったのは鈴木自身でもあった。

 2年連続プレーオフで敗れたマイヤーは「いいゴルフができたと思う。シード権も取れた。最後、チャンスはあったんだけど残念。でも、毎年毎年ここでいいゴルフができるのがいいね」とさばさばした表情をみせた。

 優勝を決めた今の気持ちは?「こんなことがあるんだなと思いました。今年は体調を崩して苦しいシーズンで。賞金ランクも(シード圏外の)47位でここにきて、このまま終わってしまうと思っていた。生涯獲得賞金のシード権もあるけど、賞金シード権を落としたくない意地もあります。でも、それまでだめだったのに、そんなうまい話(優勝)があるはずがない、おかしい、こんなこと起きちゃいけないと、今も思っています」。鈴木はいつになく冗舌だった。

 苦しいシーズンの思いは、優勝直後のうっすらと目に浮かんだ涙だった。「いえ、もっと泣くかと思ったんですよ。(コスモヘルスでシニア初優勝した)細川みたいに号泣するかと。こんな格好いい鈴木亨もいるんだと感心もするけど、まだよくわからない…早く家族に会いたい」と、吐露した。

 鈴木は家族を一番大事にしている。第1ラウンド後、娘の愛理(歌手、女優)から「今日は今日しかない、明日は明日しかないんだよ」と電話で諭され「今を精いっぱいやろう」と気持ちを新たにした。「プロになってトーナメント 1本で生きてきた人間なので、トーナメントで稼いでナンボ。そんな中で支えてくれたのは家族。苦労かけたと思います、僕はネガティブの方ですけど、女房も息子も娘も本当にポジティブに支えてくれてここまで来た。家族のためにもというのがありましたけど…やっぱりこれ(優勝)はあり得ない」と、会見半ばを過ぎても優勝を信じていなかった。

 2000年にカシオワールドオープンで優勝。2018年にもこの大会を制している。3度目のいぶすきゴルフクラブでの美酒。来年は10回目の記念大会になる。今回はコースとの相性にも助けられたのでは?「もうこうなったら、来年はここが自分のコースだと思って帰って来ます。カシオの優勝も 20 回記念大会でしたし、次回のいわさき白露シニア10回記念大会も、乗っていかないといけない」。やっと、今回の優勝を認めたように笑った。

(オフィシャルライター・赤坂厚)