鈴木亨(55)が通算7アンダーにスコアを伸ばし、首位に浮上した。北からの気まぐれな風と難グリーンに各選手のスコアが伸び悩む中、3アンダー69で回り、68をマークした2位寺西明(55)に1打差をつけた。ともに歴代覇者の争いになった。賞金ランクトップで初の賞金王を狙う篠崎紀夫(52)が2打差3位につけている。
娘のひと言が、鈴木の支えになった。「きのう、久しぶりの娘と電話で話したんです。そうしたら『今日は今日しかない。明日は明日しかないんだよ』と言われたんですよ。娘にプラス思考なんですけど、そんなこと言われるなんてね」。
娘は、歌手で女優の鈴木愛理。先日もコンサートがあったが試合のため行けず、本当は試合を休んででも娘のコンサートに行きたいところを「かみさんから『稼いで来なさい』って言われまして」と苦笑いした。
1番で左ラフからの第2打が1メートルについてバーディー発進した。風で苦しむ選手が多い中「自分でも意外とショットが安定していたんですよね」と振り返る。5番パー5では第2打でグリーン右手前のバンカーに入れ、そこから2メートルに寄せてバーディーと伸ばしそうな雰囲気になった。しかし、6番パー3で3パットしてから「雲行きが怪しくなった」という。
一緒に回った日大同期の川岸良兼はパッティングが好調。「あんな良兼を初めて見た。代わって打ってくれたら今日は64、65が出たかも」と、ラインの読みが難しいグリーンを読み切れず、チャンスを逃す。そんなときに「娘の言葉を頭に入れながらプレーした。先のこととか考えずに、今やれることをやろうと」。気持ちを引き締めた。
後半は2つ伸ばした後、15番で80ヤードほどの第3打を残したが「そこから1メートルにつけてパーを取れたのが大きかった」という。16番でOKにつけて、寺西を1打リードした。
今季は春から首が原因と思われる右腕の痛み、として今はだるさになって、思うようなゴルフにならなかった。初日よくても続かず、賞金ランク47位と低迷している。「正直嫌だった鬼門の2日目を乗り越えられたんでよかった。まだ後半になると右腕がだるくなるんですけどね」と、気持ちの上ではホッとしている。
この大会には2018年に優勝している歴代優勝者の1人。同じいぶすきGCで行われていたレギュラーツアーのカシオワールドオープンにも2000年に優勝している相性のいいコースでもある。
最終日の戦い方は?「賞金王争いしている選手もいますし、(ゴルフは)人のコントロールができないので、やれることをやるだけ。存在感の薄い1年になってしまったので、最後は来年につながるゴルフをしたい」。やはり娘の言葉通り、「今日は今日しかない」の精神で乗り切るしかない。
(オフィシャルライター・赤坂厚)