篠崎紀夫(52)が2週連続優勝を果たした。自身初の最終日首位スタートし、終盤17番でバーディーを奪って、追い上げてきた細川和彦(50)、宮瀬博文(50)を振り切り、通算10アンダーで今季3勝目、通算4勝目を挙げた。先週のISPSハンダグレートに続く2週連続優勝で今季獲得賞金を3197万9188円とし、ランク首位を守るとともに、2位井戸木鴻樹(59)に約830万円の差をつけた。
「ムリ、ムダ、ムラ」。篠崎はこの「3つのM」をなくすゴルフを目指している。それを守り切った2週連続優勝。ただ、1ホールだけ「ムリ」をするリスクを冒した。
細川に追いつかれ、通算9アンダーで迎えた左に曲がっている17番。左サイドにはOBが待つ。「18番の前にバーディーを取りたいと思いました。左のフェアウエイに打てたら」とこの日初めて無理をした。フェアウエイとらえたのが「勝因だと思います」という。左5メートルにつけ「しっかり打てた」とバーディー。細川をあきらめさせるに十分だった。
「実は、最終日に首位でスタートするのは初めてなんです。今までの優勝は逆転ばっかりだったんで」と、スタート前にちょっと不安そうな表情を見せた。確かに、昨年のマルハンでの初優勝も5打差逆転。今年2勝も逆転。「トップで出る経験がなくて、ちょっと緊張しました」と振り返る。そして「自滅だけはしない。ムリ、ムダをつくらない。おとなしくスタートしました。昨日の自分みたいに、パットが入る選手がいるとは思いましたけど」という。
前半はチャンスをものにできなかった。ワンオンを狙った5番(305ヤード)でバンカーに入れて2.5メートルのバーディーパットを入れただけ。「でも、ガッついたら3パットすると思って、入るようになるまで(我慢を)続けようと思いました」。インに入って、12番で7メートルが入った。ギアが入るかと思ったが、ボードを見ると細川と並んでいるのを確認できた。「ボギーを打たないように」と、また無理をせずにパーを重ねた。そして、唯一勝負に出たのが17番だった。
この2日間で11バーディー、1ボギー。第1ラウンドの16番のボギーはバンカーのアゴに近くに入り、バックスイングが当たりそうな不運があったためで、その他は危なげないゴルフを展開した。ISPSハンダグレートもそうだったが、3~4メートルほどのパットが良く入っている。「思ったところに打っているんですが、ラインは強弱で変わってくる。その勘が当たっている(笑い)。ホント、ただはまっているという感じなんです」という。ただ「入っているとき、外した時のリズムとかは覚えておくようにしています。こうしたら入るとか、こうしたら外れるよなとか」。そのあたりに好調の要因がありそうだ。
2週間で優勝賞金1700万円をつかんだ。「シーッ」と口元で指を立てる。誰にシーッなのですか?「いいことばっかりで、大丈夫かなって思うんです」と笑った。
先週賞金ランクトップに立ち、この優勝で今季獲得賞金を3197万9188円とした。2位の井戸木に830万円余りの差をつけている。残り2試合、コスモヘルス360万円、いわさき白露1200万円の優勝賞金があるので、安全圏とはいえない。それでも、最終戦まで僅差で賞金王を争って50万円弱の差で2位となった昨年に比べれば金額的に余裕がある。「去年は寺西さんと争って、ゴルフを楽しめなかった。その前に少しでも差を広げたいと。今年は最後までゴルフを楽しくやりたいなと思っています」。気持ちの上でも余裕がありそうだ。
今後目指したいことがある。「僕らの世代には、水巻さんやジェット(尾崎健夫)さんみたいに、ワーッとギャラリーを沸かせるような会話をできる人がいない。自分からギャラリーに声を掛けられるようになりたい。今は声をかけられたら多少返せるようにはなったと思いますけど、まだうまくは言えない。大先輩たちは技もすごいので、ショットも見ていて楽しい。そういう技術があるからギャラリーと会話もできるし、エンターテイナーでもいられると思う。自分なんかまだまだヒヨッコだと感じるので、先輩たちの技は見て学びたいと思います」。
会場で見かけた時は、篠崎プロへ声をおかけください。それもまた、今後のシニアプレーヤー人生にとっていい経験になっていくはず。
(PGAオフィシャルライター・赤坂厚)