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シニアツアー

〔ISPSハンダグレートシニア/FR〕篠崎が大逆転!52歳のバースデーVで今季シニア2勝目

2021年10月24日

 篠崎紀夫が自ら52歳の誕生日を祝う逆転優勝を飾った。首位に1打差でスタートし、丸山大輔(50)に前半引き離されたが、9番のイーグルで波に乗り、後半一気に逆転。通算15アンダーで今季2勝目、通算3勝目をあげ、今季賞金ランク首位に立った。2位に丸山とプラヤド・マークセン(55=タイ)が入った。

 

 「傍観者」が「優勝者」に変わった。

 篠崎は、最終組のメンバーを見て「勝てると思って出ていません。(丸山)大輔は勝ちたいという気持ちだろうし、キングオフシニアのマークセン。2人の戦いを間近で見られる。そう思っていました」。1番でボギーにして、なおさらそう思ったという。

 ところが、想像通り、丸山とマークセンがバーディー奪取を始める。そのうちに、自分もその流れに乗り始めていた。「油断していると置いていかれると思いました」。7,8番でバーディーを取り、9番パー5(521ヤード)で第2打残り212ヤードを4番ユーティリティーで左3メートルにつけた。これを決めて、イーグルを奪ってから「傍観者」ではいられなくなった。

 

 折り返しの時点で丸山13アンダー、マークセンと篠崎が11アンダー。マークセンが10、11番連続バーディー。「だって11番で4人全員バーディーですもん」。寺西を含めたバーディー合戦がさらにヒートアップ。誰と何打差なのか、分からない状況になった。11番から3連続バーディーを取ったところで、見えたボードには自分が2打差で首位に立っているのが確認できた。

「そこから14番で左に曲げるし、15番では寄せワン。16番で気持ちを落ち着かせないと、と思いました」。まさかの展開に一番戸惑ったのは篠崎本人だったようだ。丸山を1打リードして迎えた最終18番。6メートルのバーディーパットが、事実上のウイニングパットになった。激戦を演じた丸山が近づいてきてグータッチで祝福を受けた。

 パットのうまさには定評がある。その理由は、所属する練習場、千葉・北谷津ゴルフガーデンにある。入社した時に、同じ旭中学の2年後輩、丸山大輔が高校生で練習に来ていた。東京オリンピック銀メダリスト稲見萌寧も小学生のころから遊びに来ていた。ジュニアのレッスンをもち、池田勇太や市原弘大らも出ていたというジュニア競技会には1回目からかかわり、もう300回を超えた。

 ジュニアを見て学ぶことがある。「例えば、パットは遠いより近い方がやさしいのはだれでも知っていますよね。でも、大人になると、1メートル、1.5メートルは入れなきゃと思って難しくしてしまう。子供たちはパッと打って入れちゃう。それを見ていて、近いほどやさしいということを学びましたね」。チャンスを逃さないパッティングにつながっている。

 この日が52歳の誕生日だった。誕生日Vの経験は?「もちろんないですよ。自分は余計なことをなるべく取り除きたいタイプなので、分からない方がよかった」。実は忘れていたところが、2日目を終えた後、高1の娘の鈴華さんに電話で「明日は(大会で)何かお祝いしてくれるの?」と聞かれて、誕生日を思い出してしまった。

「自分はビビりなので、いやだなと思った時は危険を避けるようにする。大きいクラブをもってごまかす。そうやって危険を回避していくのが自分のゴルフと思っているんです」という。誕生日という言葉に「危険」の匂いがした。「だって、そんなドラマのようなこと、起きないでしょう」。でも起きました。「そうなんですよ。だから、まさか、なんです」。

 

 

 賞金ランク1位に躍り出た。それも「危険」な匂いなのだろうか。「そう。去年、最終戦まで賞金王争いをして(2位)しているときに、やはり気にしてプレーにブレーキがかかってしまった。もっと楽しくゴルフができるはずなのにって思いました。申し訳ないですけど、本人的にはこだわりがなく、リベンジの気持ちはないんです。あまり『賞金王』って言わないでくださいね」。

ただ、自分が消し去っていても、今回のように向こうからいい展開が転がり込んでくることもある。残り3試合、こればかりは「傍観者」ではいられない立場に立っている。

(PGAオフィシャルライター 赤坂厚)