「第8回トラストグループカップ佐世保シニアオープンゴルフトーナメント」の最終ラウンド。3位タイスタートの井戸木鴻樹(59)が、首位スタートの野仲茂(51)とのプレーオフに。1ホール目をパーとして、井戸木が逆転で今シーズン3勝目を飾った。前大会覇者の秋葉真一(56)は5アンダー29位タイで大会を終えた。スーパーシニアの部は初日からの首位を守り佐野修一(73)が通算3オーバーで優勝した。
井戸木鴻樹が今季3勝目を飾った。首位と2打差を逆転しての優勝で賞金ランキング1位の座に就き、シニアツアー残り4試合ながら初のシニア賞金王奪取を宣言した。
最終日、強い風がコースを襲い続けた。井戸木はグレーの長袖トレーナーを着込んでいた。襟元からは白いウエアを着用しているのが一目見て分かった。
長年悩まされ続けて来た肩痛も手首痛も顔を潜めてくれている。その陰で今季は2勝を挙げることができた。痛みの不安を完全に拭い去れたわけではないが、体を思い切り使ってスイングができる。飛距離アップを目指してのスイング改造も奏功している。
首位を走る野仲茂とは2打差。バーディー&ボギー。強風下では1ホールでスコアが大きく変わること、順位が入れ替わるもある。
井戸木にとって、強風という難しいコースコンディションが勝利を呼び込んでくれたといっても過言ではないだろう。「どんなに良いショットを打っても風の影響で狙った地点へボールを運べるとは限らない。今日は低い球で方向性重視のショットで攻めて行こう」。そのゲームプランが奏功する。ホール両サイドの林よりも低い球を打つためにフルスイングせず、スリークォーターのショットに徹し、ボールに加えるバックスピン量を抑える。さらにアイアンを手にした時には、あえて大きめの番手で振り幅を小さくして打ち、ピン手前に止める作戦を採ったのだ。
7、8番ホールでの連続バーディーで野仲を逆転し、単独首位に立った。だが、野仲も食い下がり、9、10番ホールでの連続バーディーで再び単独首位の座に就く。井戸木は負けじと11番ホールでバーディーパットをねじ込む。首位に並んだまま16番ホールを迎える。野仲がバーディーパットを決めて通算8アンダーの単独首位に抜け出すと、井戸木が続く17番ホールでバーディーパットを決め、野仲を捕まえる。両選手とも最終18番パー5ホールをパーとして、一騎打ちの決着は18ホールで着かず、プレーオフへと持ち越される。
同1ホール目、オナーの井戸木はフェアウエイ右サイドをキャッチした。フェードボールを持ち球にする野仲は、フェアウエイ左サイドの林に打ち込む。「左サイドへ運んだ方なら2打目以降が楽に攻められるのですが、ミスすると左の林に捕まる。その危険性が高い。僕はティーショットを安全な方向へ打った。3打目で乗せればいいと考えてしましたしね」。結局、野仲は5打を費やしてグリーンをキャッチした。井戸木は野仲のプレーを冷静に見ながら、自分はパーセーブしたなら勝てることを考えていた。だが、気持ちは決して切らさず、緩めなかった。「強風の影響でグリーン上だって何が起こるか分からない状況でした。上りのパットでもボールが風に押されたならどこまでも転がって行きそうでした。タッチを出すのが本当に難しい。強めても緩めても打てない。バーディーパットがカップ脇に止まってくれた瞬間、勝てたとようやく思ったほどでした」。
パーセーブしてのプレーオフ勝ち。井戸木らしい勝ちっぷりかも知れない。「1、2打差で競っている時は、最後に一番上(首位)に居ればいいんだと思ってプレーしていました。(今季2勝目の)コマツオープンで混戦を抜け出して勝てたのが、今回の優勝に繋がったようにも感じます。自分のゴルフに自信が持てる勝利は本当に嬉しいです」。
次試合「ISPS ハンダグレートに楽しく面白いシニアトーナメント」は井戸木にとって今季2戦目となるホストプロでのトーナメント。「実は、まだ通過を果たしたことのない大会なので、さらに気を引き締めて臨みます!」と井戸木。気持ちを切らさない、その先には初のシニア賞金王タイトルがあるからだ。
「今日は勝負服の黄色のウエアは着なかったのですか」。そう尋ねた。「ああ、黄色のウエアですね。着て勝てず仕舞いばっかりだったので、逆に黄色は着ないようになりましたね」と白い歯を見せて笑った。(勝負服よりも心強い自信を持ったので)と言わんばかりの笑顔が輝いていた。井戸木はさらにまた強さを増した。
(オフィシャルライター 伝昌夫)