「良かった、良かった。ホント苦しかったよ」。スーパーシニアの部で優勝を飾った佐野修一は順位を確認にし、そばにあった椅子に腰を下ろして安堵の表情をようやく浮かべたのだった。
通算3アンダー単独首位からスタートした佐野は、1番パー4ホール早々に試練を迎える。ピンが弓なりの状態を保つほどの強風が、2位に5打差を着けていた佐野のスコア貯金を減らす。ピンまで135ヤードの2打目をピッチングウエッジで放った。「それがまた良いショットだったんだよ。それがグリーン奥にこぼれちゃってさ」。アゲンストの風に距離感が狂った。返しの寄せはフォローの風向きとなり、繊細なタッチが求められた。「寄せ切れないよ。おまけにパットも風が強くて打ち切れない。いきなりのダブルボギーだったんだ」。3番パー5ホールでも似たような目に遭った。ピンまで178ヤードの3打目を7番アイアンでショットした。「ピンに向かって真っすぐ行ったんだぜ。これがまたグリーン奥まで転がって…またダボだよ」。勝ったからこそ、ボヤキで済ませられるのか知れない。「今日はピン手前にしか打たない!って腹を決めたんだ」。
ハーフターンで2位と3打差であることを確認し、サンデーバックナインに臨んだ。「このコースコンディションならアンダーパースコアを出すのは難しい。イーブンパーが精一杯だと読み、パーセーブのゴルフに拍車を掛けたんだ。(スーパーシニアの)速報版がないから、読みを信じるしかなかった」。後半は1ボギーと耐えて迎えた最終18番パー5ホール。3打目をグリーン手前に落とし、4打目の寄せでピン手前1・5メートルに着ける。これを確実に決めてパーセーブ。2ボギー・2ダブルボギーの78でフィニッシュ。2位の山本己沙雄に4打差を着けて勝利の美酒を手にしたのだった。
「こうしてプレーさせてくださった方々への恩返しが少しは出来たと思う。大したスコアじゃないけどね…。初日にエージシュートを達成できたのが、せめてもの救いかな。スーパーシニアともなると試合がなくてね。来週は福島県に移動してマンデーならぬ(ISPSハンダグレートに楽しく面白いシニアトーナメント)チューズデートーナメントに挑戦するんだよ」。来年3月には74回目の誕生日を迎える佐野修一、73歳。トーナメントプロの魂を磨き続けている。