「第31回日本シニアオープンゴルフ選手権」(JGA主催)最終ラウンド。首位スタートの手嶋多一(52)が、頭脳戦を戦い抜いて7バーディー2ボギー66ストロークで回り通算19アンダーと、2位に8打差をつけて日本シニアオープン優勝を飾った。2001年日本オープン、2014年日本プロ優勝についで、日本タイトル3つ目を獲得。2位に桑原克典(52)、3位に飯島宏明(50)が入った。
終わってみれば記録尽くしの優勝だった。手嶋の優勝スコアは265ストローク「通算19アンダー」。大会優勝最少ストロークだった2017年プラヤド・マークセンの記録を5打更新。さらに「2位に8打」をつけての優勝は、2008年中嶋常幸優勝時の6打差から2打伸ばして大会最多差となった。そして日本オープン、日本プロに加え、日本シニアオープンと3つ目の日本タイトルを獲得したのは、「史上4人目」の快挙でもある。
最終ラウンドの前夜は、さすがに寝られなかった。5打差でリードしているという立場は、心理的な状況が違ってくる。「スコアが並んでいたり追いかける立場だと、さほどプレーについて考えることはないのですが、なかなか寝られなくて、Youtubeを見たり電気を消したり、横になったり起きたりと繰り返して。今週は3連休ということもあって、泊まっていたホテルの連泊ができずに、宿を変えたことも原因かもしれませんが(笑)」と、苦悩もあった。5打差ある最終ラウンドを、一体どうやってプレーしようかと不安がよぎったが「朝の練習場でクラブを振ってみたら、今の調子でいければ大丈夫だと確信しました」と、手ごたえを感じていた。
手嶋は第3ラウンドのバックナインから、自分のゲームに没頭する「完全集中スイッチ」が入っていた。一夜あけた最終ラウンドでも手嶋のスイッチはオンに入ったまま、ゲームがスタート。2番パー4で6メートルを沈め、4番パー4では、2.5メートルのスライスラインを読み切って2つ目のバーディー。6番パー4では重いグリーンを打ち切れず3パットでボギーとすると。、7番パー4で2メートル、9番パー5は10メートルのイーグルパットを外したが、前半は4つのバーディーを獲得。
後半に入っても高まっていた集中力は途切れなかった。同組の深堀、マークセンがスコアを伸ばせなかったので「ミスしないように」と気を引き締めた。11番パー4では2.5メートルのスライスラインを沈めると、13番パー5では2オン2パットで6つ目のバーディー。16番パー3はシャンク気味のショットが出てボギーとしたが、最終18番パー5、2オンに成功しバーディーフィニッシュ。最終ラウンドで目標としていた5アンダーで回ることができた。手嶋だけが、今年の舞台で4日間60台をマークできた。日本タイトル獲得にふさわしい王者のゴルフを魅せることができた。
「レギュラーに限らず、最近はシニアでも良いところまでいったのに、最終日に崩れることが多かったので、正直自信を失いかけていました。この優勝で、後半戦の試合は頑張ることができます」と、肩の荷を下ろした。レギュラー時代から切磋琢磨していた深堀圭一郎、プラヤド・マークセンと戦った最終日は、今まで感じたことのないプレッシャーもあった。コースメモで予習・復習する頭脳ゲームが求められた。さらに苦手だったスライスラインの克服、インパクトを緩めず最後までしっかりと打つこと心掛けた結果、目標としていた日本シニアタイトルを掴むことができた。「20年振りの日本タイトル制覇ですね。本当に嬉しいです。日本タイトルホルダーの名に恥じることのないように、これからもいいゴルフを求め続けます」。2001年日本オープン、2014年日本プロに続く3つ目の日本タイトル獲得。4冠目は日本プロシニアへの挑戦が待っている。