伊藤正己(65)は65ストロークでエージシュートを達成し首位タイと好スタートを切った。「嬉しいですよ。本当に嬉しい。それだけです」。日本シニアオープン初日を最高の形で終えられた。シニアツアーで伊藤がエージシュート達成した記録は、2019年62歳の時に、ノジマチャンピオン杯の初日62ストロークでエージシュートを達成して以来の2度目。シニアオープンでも2007年青木功(65歳65ストローク)、2017年海老原清治(68歳68ストローク)以来、3人目の快挙を達成した。
1番ホールをチップインバーディーで幸先の良いスタートを切ると。2番もセカンドはピンにぴったりとつけられた。パッティングは外れたものの「今日はショットがキレていたので、それほど気にしない」と気持ちを切り替えた。続く3番ではセカンドを1メートル弱に付けてのバーディー。5番でも2メートルを決め2つ目のバーディー。伊藤はそれまでエージシュートについては考えてなかった様子。「9番バーディーを獲ってから。少し意識しました。でもすぐ10番でボギー。なんだったんでしょうね」。気持ちや意識の変化がちょっとしたミスを呼び、ボギーにしてしまうのも、ゴルフが心理スポーツと言われる所以なのだから。
伊藤は続く11番でバウンスバックに成功。「再びエージシュートを目標にしよう」という気持ちになった。その心理の変化が12番、13番の連続バーディーに現れた。
「でも14番からそのスコアを必死でキープしようと、2パットパーの連続でした」。最終18番ホールパー5も3オンし、パーパットを沈め、ついに66ストロークでエージシュートを達成。満面の笑みを浮かべ、スコア提出所に向かった。伊藤は「ありがとう」と言葉少なめだったが、喜びを爆発させたいくらい、大きな笑顔が輝き、余韻で満たされていた。
2019年にエージシュートを達成した時は「2日間競技だったので優勝するかもしれないと思って、優勝コメントまで考えていたんですよ」。伊藤は几帳面で真面目な一面も持つ。シニアオープン残り3ラウンドについては「今回は特に目標はありません。この年齢でこの舞台に立てていることが誇りです」。
本人は「いたって普通ですよ」というが、伊藤の普通度合いは、努力する姿を決して披露しない。練習の虫といわれる65歳・伊藤正己が、謙虚な部分があるからこそ、今日この日の舞台に立てている所以なのだろう。明日もエージシュートという目標をひとつ掲げ、最後まで走り抜きたい。