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シニアツアー

〈FANCL CLASSIC前日〉初代チャンピオン高橋は感謝の気持ちをプレーで示す

2021年08月19日

 練習グリーン前に設置された応援メッセージボード。ファンケルクラシック主催社の社員3000人の写真をモチーフにして作り上げられたその前に佇んでいたのは、髙橋勝成だった。

 2001年に新規トーナメントとして開催された同大会の栄えある優勝者であり、3連覇の偉業を打ち立ててもいる。あれから20年の月日が流れた。

「コロナ禍で昨年は開催中止になりましたが、今年はこうして開催して頂ける。選手として本当に有り難いことです。感謝しかありません。実は、この大会には何物にも代えがたい思い出があるんですよ」。髙橋は、ポツリポツリ、言葉を探しながら話し始めた。

「当時、次男の勝紀が大病を患って1年の長期入院していたのですが、ようやく退院ができて、一緒に試合会場へ出掛けられた。それが、この大会だったんです。外へ出られたという次男の笑顔を見られて心から嬉しかった」。

 長雨続きだった富士山の麓の大会舞台・裾野カンツリークラブにも夏の日差しが戻り始める。入道雲が浮び出した。

「息子の笑顔が起爆剤になったのかも知れません。(初日から)好スコアで回れたんです。お陰で優勝できました。第1回大会で勝てた。自分にとって最高の記念大会になったんです」。大会の記録を紐解くと初日69、2日目と最終日ともに66をマークし、通算15アンダーで2位に6打差を着けてのブッチギリ優勝を遂げている。「2回、3回大会でも優勝していますが、その記憶がほとんどありません。それほど1回大会の印象が強いんですね」。髙橋の目に涙が溜まっていた。「家族の絆を強めてくれた大会だと思います。大会会長には息子を気遣ったお言葉を掛けて頂きました。でも、04年に次男は天に旅立ってしまい、そして大会4連覇はできませんでした。その大会が、こうして20回大会を迎えるなんて感慨深いですよ。感謝の気持ちでプレーし、大会を一生懸命に支えてくださっているスタッフやボランティアの方々に元気を与えたい思いで一杯です。それと笑顔を送りたいです」と高橋は空を見上げたのだった。涙が零れ落ちないように、天国の息子に誓うように--。

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チーム髙橋メンバー・寺西明選手や裾野カンツリー倶楽部・グリーンキーパー片岡さんのインタビューは こちら>>