前半を1バーディー・1ボギーと無難に回った篠崎紀夫は、オレンジ色のウエアを着ていた。「雨が降るという天気予報だったので、あれこれ悩んでオレンジ色を選びました。パンツは黒や紺色だと地味になり過ぎるから、白にしてみました。クラブハウスに来て驚きましたよ。だって同組の柳沢(伸祐)さんも(プラヤド)マークセンも同じオレンジ色のウエアを着ていたんですから。きっと、天気がウエアの色を選ばせたんでしょうね」。
シニア入りして篠崎がマークセンと同組でプレーするのは、初めてだった。「スイングといい、ショットいい、レギュラーツアー時代とまったく変わっていませんでした。切れのあるアイアンショットを打ったり、グリーン上では距離のあるパットを簡単そうに放り込んだりしてマークセンは前半スコアを伸ばしていました。相変わらずだなって思いながらプレーを見ていました」。篠崎は自分のペースを守り、安全プレーに徹していた。
後半に入って、チャンスがようやく訪れた。12、13番ホールでワンピン距離のバーディーパットを決める。やや右ドッグレッグの14番パー4。リンクスのような佇まいのホールでは、風が左サイドから吹いているように感じた。フェアウエイ左サイドのバンカー方向へフェードボールを打ち出したならフェアウエイを捕らえられる。そんなショットイメージを持って放ったドライバーショットだった。
だが、思いのほか風は強く、コーナー手前でボールはホール右サイドの湿地帯に消えた。レッドペナルティーエリアだったことでドロップしたものの、残り距離は230ヤード。ボール位置からピンは見えなかった。5番ウッドでグリーンに近づけようと思ったショットは、花道で跳ねた。グリーンに上がって行くとボールはカップ1メートルに着いていた。「ラッキーな一打でした。これが今日の最大のハイライトだったかな。パーセーブができてホッとしましたし、それが17番ホールでのバーディー奪取にもつながったように思います」。
今季2勝目が視野に入る5位タイ。首位とは2打差を「いつもどおり自分のできることをするだけです。ヨシッと気合いが入ってしまうと必ずミスが出る。焦らず、上(のスコア)を見ず、自分のゴルフに徹しますよ。それよりも、明日(最終日)は何色のウエアを着ようかな。それが大きな問題ですよ。まずはホテルに戻って洗濯しなくては」。験を担いで、もしかするとオレンジ色のウエアでスタートティーに立つのか。それもまた、楽しみになって来た。