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シニアツアー

〈スターツシニア・FR〉シニアルーキー細川が2位タイに。チーム髙橋はこれからもシニアを盛り上げる

2021年06月13日

 最終18番パー5ホール。ティーショットはフェアウエイ右サイドのラフに捕まった。ピンまでは残り270ヤード。前日は似たような地点からボールがドロップすることを恐れるあまりにスイングを緩め、ショートしてしまった。(最終日の今日は、グリーン奥にこぼれても構わないから、しっかり振ってやる!)。そう決断し、3番ウッドを力強く振り抜いた。ボールはグリーン左上に止まった。ピンまで15ヤードのイーグルパット。ラインに乗ったように見えたが、カップ手前でわずかに反れた。タップインでのバーディーフィッシュで通算15アンダーにスコアを伸ばした細川和彦は、前日4位から2位タイに順位を上げたのだった。シニア初優勝には3打及ばなかった。

「(最終日)前半はグリーン奥めのピン位置が多く、無理に突っ込んでオーバーしての3パットはしたくなかった。今思えば、安全に攻めすぎたかな。それでも大会3日間54ホールでボギーは初日の一つだけなら、勝てなかったけれどトータル的には上出来ですよね」。優勝を逃した悔しさを抑えながらも、次につながるゴルフを押し通せたことに細川は目を細めた。

 今季からシニアツアーに本格参戦した。練習ラウンドをはじめ、ツアー行動は髙橋勝成をリーダーにした「チーム髙橋」と送っている。「寺西明さんも中山正芳さんも髙橋さん同様に、ゴルフに真摯に取り組んでいるのでとても勉強になります。先輩3人から学ぶことが多くて……僕はチームの正式メンバーではなく、まだ研修生扱いなんです。早く正式加入を認めてもらいたいんです」。2位タイの好成績を挙げただけに、その可能性は高まったのだろうか--。そんな細川にチームリーダー高橋が初日に続くエージシュートを惜しくも逃したことを伝えた。

 「あと一打足りなかったんですか?凄いな。(記録達成を)逃したとはいえ、1アンダーのスコアですよね。あと2カ月ほどで71歳の誕生日を迎えるのに、ホント凄い。改めて尊敬します」と細川は敬意を表した。

 その髙橋は最終日、18番パー5ホールで3メートルのバーディーチャンスを作り上げた。「このパットを決めればエージシュートだと分かっていました。髙橋さんが前半で2アンダーをマークした時から、口にはしませんでしたが、ずっと心の中で応援していました。途中、ボギーにしたけど、あと一打は18番ホールで縮められるはず。それまで頑張って!とね。とにかく寄せが上手い、天下一品ですよ。僕にもあれくらい寄せの引き出しと技術が欲しいですよ」。同組で回った小山内護は振り返る。髙橋のバーディートライが成功することを願っていたという。「だって目の前でエージシュート達成を初めて見られるかどうかのパット。もう僕の心臓がドキドキ、バクバクでした」と付け加えた。

 髙橋はバーディーパットのラインを読み切れずにいた。「下りのラインでしたが、真っ直ぐにも見えたし、カップ際でスライスしそうにも見えたのです」。高橋は若干のスライスラインと読み、構えた。「違う、違う。逆に読んでいる。スライスじゃない、フックですよ。心の中で叫びましたよ」。小山内の読み通り、正解はフックラインだった。髙橋が打ち出したボールはカップ手前で左に反れる。18番グリーン周りのギャラリーから大きなタメ息がこぼれた。

 「仕方ないですね(苦笑)。これからは(クラブを)振る体力をつけなければならないという宿題を頂いたと思います。次の試合を目指して頑張るだけです。私にとってエージシュート達成は、努力すれば叶えられる夢です。やりがいであり、張り切れることがあるから頑張れる。それが勝ちにつながるはずだと思っています。古希を過ぎても挑める。こんな姿で誰か一人でも元気づけられたらプロ冥利に尽きます」。謙虚な直向きさを覚える。

 そんな髙橋に尋ねた。「2位タイに食い込んだ細川プロが、『チームの正式メンバーになれないかなぁ』と言っていましたが?」。「ダメです。優勝するまでは」と高橋は即答した。優しさを厳しさで包んだ励ましの言葉に聞こえた。チーム髙橋メンバーの活躍ぶりもまた、シニアツアーを盛りあげて行く。

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)