「なんだ、なんだ!?やっぱり昨日は死んだふりだったんだな。少し良くなれば、と言っていたけど」。この日は2アンダーにとどまり、首位とは5打差の6位タイにとどまった篠崎紀夫は、前日に同組で回った選手の元に歩み寄り、言葉を重ねた。「で、今日はいくつで回ったの? パット数は?」。尋ねられた選手は、少し申し訳なさそうに答えた。「8アンダー、64でした。パット数は26だったかな…」。
日焼けした顔に汗の滴が流れ落ちる。宮瀬博文は会心プレーを展開した。ボギーフリー。「今年、一番のゴルフでした。出だしのホールでボギーになってもおかしくありませんでしたが、難しいラインのパーパットが決まってくれたのが良かった」と振り返る。スタートホールでのパーセーブが、この日のベストスコアをもたらす猛チャージのスイッチをオンにした。2番ホールでのバーディーを口火に前半では3バーディー、後半は5バーディー奪取に成功する。ドライバーショットはフェアウエイを、アイアンショットは確実にグリーンをキャッチし、パットが思いのほか決まった。
「明日の最終日も今日と同じ内容のゴルフ、危なげのないゴルフをして、スッーと回りたいです。そうしたら見えて来るかなぁ」。宮瀬は篠崎の顔色を伺いながら、ポツリと呟いた。宮瀬が見たい景色、それはシニア初優勝しかない。「今日、宮瀬が上手くハマったから、明日はきっと俺が爆発スコアを出す番になるね」。今度は篠崎が宮瀬の顏をチラリと見て、そう言った。
「とにかく、明日も頑張りましょう!!」。逆転優勝を互いに誓い合っている光景が、最終日の大混戦を予感させた。