タワン・ウィラチャン(54=タイ)が2年ぶりの日本シニアツアー復帰初戦で完全優勝、通算4勝目を挙げた。2位に4打差でスタートしたが、前半崩れてタイの先輩プラヤド・マークセン(55)、シニアルーキー丸山大輔(50)にいったん並ばれたが、後半立ち直って再び突き放し、通算13アンダー203で優勝した。2打差2位でマークセン、3位が丸山だった。
微笑みを絶やさないウィラチャンも、さすがに疲れた表情を見せた。「今日はとっても疲れる一日でした」。その言葉に、優勝までの苦闘が表れていた。
2位のマークセン、丸山に4打差でスタート。前日までの安定感から行けば、そのまま逃げ切れる数字だったが、そうはいかなかった。2,3番でティーショットをミスして連続ボギー。マークセン、丸山が1つバーディーを奪って1打差に迫られていた打ち下ろしの7番パー3(158ヤード)。9番アイアンを持っていたが、ダフって左手前の池に打ち込んだ。ドロップして3打目でピン上2メートルのせ、何とか沈めてボギーに抑えたが、ここで3人が8アンダーで並び、優勝争いは分からなくなった。
「気持ちが怒っていた。左手首も気になっていた」という。来日後の初戦ダイヤモンドカップ(レギュラーツアー)で木の下から打った時に土で見えなかった木の根を直接打って痛めた。気持ちを落ち着かせるために、手首を冷やすスプレーをかけてひと息。8番パー5で、残り235ヤードの第2打を3番ウッドで2オンした。ここは3人とも2オンのバーディーだったが「気持ちを切り替えられた」と振り返った。
10番で先にバーディーを取って再びリード。11番で追いついてきたマークセンが12番で落とし、丸山もボギーにして単独首位に。ここから、前日までの「ソツのなさ」が復活した。「並ばれていた7、8、9番では、今日は優勝できないと思った。優勝を意識することをやめたら頑張れた。頭もよくなったかも」と笑う。
終盤はマークセンとの一騎打ち。15番パー5が分かれ目になった。2オンながら20メートル以上のイーグルパットを1メートルに寄せたウィラチャン。1.5メートルのイーグルパットを外したマークセン。同じバーディーでも、気持ちは違った。「あのパッティングが入っていたら…」とマークセンは悔やむ。「うまく寄せられた」とウィラチャンは胸をなでおろした。16番で3メートルを入れて1打差とし、逃げ切り態勢が整った。
昨年はコロナ禍で来日できなかった。この大会も含めて中止も相次いだ。今季は開催されることになり、4月25日に来日。14日間ホテルで自主隔離をした。「その間は寝て、食べて、パターとスイングをやって」過ごした。隔離が終わって外でクラブを振った時は「アイアンが重かった。パターも含めて、クラブをどう振ったらいいか分からなかった」と苦笑いする。5月13日からのダイヤモンドカップの練習ラウンドでは「歩くもの大変だった」と、マークセンとともに予選落ち。その後、愛知・豊田に行って1週間に3ラウンドして体力とゴルフ勘を取り戻して行った。
「でも(今大会の)練習ラウンドではサイ(左)グア(右)の連続だった」という。ショットが散らかったまま迎えた第1ラウンドで64と抜け出したのは「自分でも信じられなかった」という。
今年は日本のシーズン終了の12月まで滞在する予定。ホテルを移動することにしている。「お金がかかるんで頑張ります」。この優勝賞金は1000万円ありますけど?「去年はタイでシニアの試合に出ていたけど、優勝しても30万円ぐらい。お金がない」と肩をすくめた。
2019年賞金王が、そのままの強さでシニアツアーに戻ってきた。
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(PGAオフィシャルライター 赤坂厚)