篠崎紀夫(51)が、プレーオフで伊澤利光(53)宮瀬博文(50)を破り、シニア通算2勝目を挙げた。通算10アンダーで並んだ3人のプレーオフとなり、伊澤、宮瀬が長いパーパットを残して3パットのボギーとし、パーをセーブした篠崎に軍配が上がった。2週連続優勝を目指して首位でスタートした寺西明(55)は17番でダブルボギーをたたいて1打差で4位だった。篠崎は優勝賞金1000万円を獲得し、2020年シーズンのシニアツアー賞金ランキング2位という実力を遺憾なく発揮した。
「経験の違い」が、篠崎を優勝に導いた。
優勝会見で篠崎は、伊澤、宮瀬の正規の18番での様子を報道陣に聞いた。伊澤は右奥のカラーからのパーセーブ、宮瀬はグリーン左手前からアプローチで寄せてパーセーブ。「そうですか、やっぱり。2人とも下の段からパットを打っていなかったんですね。じゃ、強く打てない。僕はやっていたんで」。
自ら「怒涛」と表現した11番からの猛攻。「それまでじっと流れが来るのを待っていたんです。無理にやるとだめなので」と、そこまで2バーディー、1ボギー。上が伸ばしていくのを知りながらも、マイペースを貫いた。
11番で140ヤードを9番アイアンで1メートルにつけた。スイッチが入った。12番パー5では「風が回っていたんですが、オーバー目に打とうと」と224ヤードを5番ウッドでピン上2.5メートルに2オン。これを沈めた。13番、第2打を少しミスしてピン右10メートル。「遠いんで先に打ちますって打ったら入ってしまった」。14番、2.5メートルについてバーディー。15番パー5では「100ヤードを残して、第3打勝負。1ピン(2.5メートル)ぐらいにつきました」とバーディー。11番からの5ホールで6つスコアを伸ばし、リーディングボードを駆け上がって、寺西と並んで11アンダー。トップに立った。
最終18番、風を間違えて第2打は2段グリーンの下段、ピンまで15メートル以上を残した。しっかり打ったつもりだったが、2メートルほどショート。痛恨の3パットで落とす。しかし、この経験がプレーオフで生きた。寺西がまさかの17番ダブルボギーで再び首位に並んだ。10アンダーできた伊澤、宮瀬が18番を取れず、プレーオフに突入した。
3人とも第2打で突っ込み切れず、グリーン下段に。伊澤は24メートル以上、宮瀬は20メートルほど残した。篠崎も右に乗っただけで20メートルほど。伊澤が5メートル、宮瀬は3メートルほどショートした。「自分は1度経験していたんで。下段からはすごく重いんです」。第1パット、今度は80センチまで寄せた。2人がパーパットを外した。パーをセーブした篠崎に、優勝賞金1000万円が渡った。
昨年シニアデビューし、マルハンカップ太平洋クラブシニアで初勝利を挙げた。最終戦まで寺西と賞金王争いをして2位。今年は「ショットは仕上がっていました。寺西さんが開幕から真価が問われるとコメントしていましたし、そうなったら 2位の自分も何となくついていかないと、いけないというわけではないですけど、周りの方からも『寺西さんをやっつけろ』と他人事のように言うので」と苦笑いする。寺西の言葉に引きずられて、開幕2週連続優勝を阻んだ形になった。
千葉県の練習場、北谷津ゴルフガーデンでレッスンをするのがここ30年続けている仕事。この練習場には先週女子で優勝した稲見萌寧もここで育っている。「北谷津2週連続優勝で、盛り上げっているんじゃないですか」という。優勝副賞の85型大型テレビは「うちには入らないんで、会社に置いてもらおうかな」と笑った。
練習場の特色は、ショートコースを併設していること。「いろんなライでアプローチができる。萌寧もここで練習して、いつも男子に勝っていますから」という。シーズン入り直前に、ボールに違和感があって、契約メーカーの2つのボールを試したのも、このショートコースでサンドウエッジを打って決めた。「どちらも軟らかめなんですけど、これまで使っていた球がどうも球離れが速く感じて、もう1つの方にしたんです。球を決めるのはいつもサンドウエッジで打って決めています」という。ボールにネームを入れるのは間に合わなかったが、その選んだ球が間違いではなかったことを、今回の優勝で証明した。
いい滑り出しの2021年。あと何勝ぐらいできそう?「うーん、勝とうと思って勝てればいいんですけど。勝ちたがっている仲間もいますし」と、にごした。「でも、プレーオフはレギュラーの1勝(ANAオープン)も、去年のマルハンも勝ってるんです。3戦3勝」と胸を張る。篠崎とプレーオフになるのは避けた方がいいかもしれない。
(オフィシャルライター・赤坂厚)