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シニアツアー

<金秀シニア・1R>2位につけた久保が再シード入りをかけて戦う

2021年04月09日

 2015年大会覇者の久保勝美が、3バーディー・ノーボギー69で回り、首位と1打差の2位タイ。逆転優勝を狙える好位置につけた。

「ケガの功名です。ゴルフ人生30年で初めてのことです。ギックリ腰に見舞われてクラブを持てない、振れない日が延べ30日以上もあったんですからね」。

 ギックリ腰の再発を防ぐため、8割の力加減をスイングのMAXにし、ピンに絡めるよりもグリーン中央に乗せることを優先させるプレーに徹した18ホールだった。その結果が自身の予想を大きく上回るノーボギーでのラウンドをもたらしたのだ。「練習ラウンドとは違って試合になると知らず知らずのうちにどうしても力が入ってしまう。欲をかかず、練習もラウンドも少ないんだからショットが曲がって当然と割り切り、自分を信じ続けてショットしていました」と久保は神妙な面持ちでこの日のラウンドを振り返った。

 昨20年の賞金ランキングは35位にとどまり、久保は14年から6年間保持して来た賞金シードを手放した。「練習ラウンド仲間の秋葉(真一)や清水(洋一)、田村(尚之)は賞金シードを守りましたが、僕だけが無シード選手になってしまった。一緒に練習ラウンドしたいし、ツアーを転戦したい。その思いからオフは気合いが入ってしまったのが良くなかったみたいです」。

 ツアー出場優先順位を争う今年3月上旬の最終予選会に照準を絞っていた。少しでもゴルフの調子を上向きにして臨みたい。3月が近づくにつれ、練習量を増やし、ラウンド回数も多くした。「6日連続のラウンド、それも栃木へ行ったり、千葉や神奈川(のコース)へ行ったりと移動距離も半端ではなかったかも知れません。ラウンド後はその日のショットを反省して練習場へと向かう。その繰り返しによって疲労がピークに達していたのでしょうね」。

 最終予選会を2週間後に控えていた2月19日。栃木県のコースでの練習ラウンド。朝イチのティーショットで腰に激痛が走る。ギックリ腰だ。しかし、久保は無理してラウンドを続けるが、8ホール目でギブアップせざるを得ないほど腰の具合は悪化した。ギックリ腰は回復しない。最終予選会の前日、練習ラウンドでは痛み止めの注射を打ち、薬を服用してティーオフしたが、ハーフでリタイアする。迎えた本戦では3ホール目で棄権したのだった。

「丈夫な体に産み育ててくれた両親に感謝していましたが、ついにギックリ腰に見舞われた感じです。今年は無シード選手。推薦出場という少ないチャンスを生かして再シード入りを目指すしかありません。歴代覇者ということで今大会は呉屋大会会長の推薦を頂き、本当に感謝しています」。

 そのお礼を成績で返すチャンスを久保は作り上げた。「逆転優勝ですか? 狙ってできるものではありませんよ。最終日も一打一打、8割スイングで安全に攻めて行き、1円でも多く賞金を稼ぐだけです」。これが最終日の目標だが、久保は不思議そうな表情で最後にこうつぶやいた。「去年までは、あんなにノーボギーゴルフを目標にラウンドしていたのになかなかできなかった。腰を痛めたら、こうして出来た。それだけ以前は欲をかいていたんですね。欲かきは得なし、謙虚さがどれだけ大事なのか改めて体感した一日でした」。明日の最終日、無欲で逆転優勝となれば、これまた最高の一日に変えられる。

(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)