プロテスト合格者47名による「第23回 日本プロゴルフ新人選手権大会 富士可児カップ」最終ラウンドが12月24日、富士カントリー可児クラブ可児ゴルフ場志野コースで行われた。最終組首位スタートの山浦一希(中筋建設・22)、安森一貴(オータニ広尾CC・24)、大澤和也(朝日インテック・24)が通算6アンダーで並びプレーオフへ。1ホール目は山浦、安森がバーディーとし、大澤が脱落。2ホール目で山浦が12メートルのバーディーパットを沈め、新人戦優勝を飾った。山浦には優勝賞金100万円と、来年グランフィールズカントリークラブで行われる日本プロ出場権が与えられた。
「やりきりました・・・」。新人戦最終ラウンドのプレーオフまでの長い一日を終え、山浦一希はようやく肩の荷を下ろした。初日をトップタイで終えてから、最終ラウンドを最終組でスタートするまでの時間を、どう過ごせばいいのかと、不安な気持ちと重圧がのしかかる。山浦は「プレッシャーでつぶされないように、自分のゴルフに徹するだけ」と何度も自分に言い聞かせてきた。山浦流で言えば、この二日間で得た情報を基にコースマネジメントをするだけ。パー4であれば、4つの課題にきちんと向き合えるかどうかという考え方に切り替えることが求められた。
最終ラウンドは、2番パー5ホールで1.5メートルにつけて1つ目のバーディー。続く3番パー4では2打目の奥に外してボギーとしたが、4番パー3では2.5メートルを沈めてバウンスバックに成功。5番パー4でも2メートルに着けチャンスを生かして3つ目のバーディー。7番パー3では4メートルからのラインが見つけられず3パットボギー。前半は1つスコアを伸ばせたが、最終組は威圧感で包まれていた。「とにかく雰囲気にのまれないように耐えよう。ゴルフはミスのスポーツ。4つの課題をこなすだけ。できたら自分をほめよう」と何度も自分を鼓舞し続けた。
苦しい後半も、帯同キャディを勤める後輩の池田拓己さんが傍でサポート。他愛無い話をしてくれることが、心を切り替えられる大事な時間だった。11番パー3ではショットをグリーン右に外し、アプローチも寄らずに3パットボギー。しかし12番パー5では3メートル、13番パー4でも同じく3メートルを沈めて確実にスコアをのばす。難関のラスト3ホールに差し掛かると、スコアボードで自分が6アンダー首位に並んでいることを確認した。
「優勝するには7アンダーだな」と思った矢先、16番パー4ホールでは2打目を乗せられずボギーでスコアを落としてしまった。凌いで迎えた最終18番パー4ホール。しっかり振り切ったティーショットのドライバーは右の林方向へ。ボールが落ちた地点はわからなかったが、ボールは傾斜を利用してラフの上に残っていた。残り197ヤードを6番アイアンで放った。ピンまで5メートルの距離が残ったパッティングを冷静に沈め、バーディーで6アンダーフィニッシュ。プレーオフに持ち込むことができた。「18番ホールには救われる何かがある」と、山浦は感じていた。
大澤、安森とのプレーオフ1ホール目。グリーンで1番目に打った大澤は7メートルのバーディーパットを外す。2番手の山浦は5メートルを沈める。安森が1メートルの距離で楽々バーディーとし、大澤がプレーオフ脱落。2人によるプレーオフ2ホール目。安森はティーショットを排水桝付近の足場の悪い場所へ。2打目をサイドバンカーに入れて3打目でグリーンオン。山浦の2打目はピンまで12メートル奥の位置へ。「正直、開き直っていました。ただ自分のゴルフを貫こうと」。山浦は自信をもって打った長いパッティングは、カップにすうっと消えた。その瞬間に優勝が決まった。「これなんだ、ゴルフはメンタルの持ち方が一番大事なんだ」と、山浦は学んできたメンタルトレーニングは間違いではなかったと、改めて確信した。
山浦は昨年のプロテスト2次落ちを期してから、「自分には一体何が足りないんだろう」と問い続けた。有名で実力ある海外のプロゴルファーは、技術の向上だけではなく、メンタルトレーニングを行っていることを知った。「だって、プロのみなさんはそんなに技量レベルは変わらないですよね。違いといえば、心の捉え方だけなんです」と山浦は気が付いた。
それからメンタルトレーニングに関する数多くの書籍を読み漁った。知れば知るほど、自分のゴルフスタイルにしっくりきた。「まずは自分に優しくすること。厳しいテーマを与えて、プレッシャーにする必要はありません。その繰り返しで技術が向上すると、精神的にゆとりができて、成功することで心が満たされますよね。今はゴルフが、試合が本当に楽しい」。
今年8月の最終プロテストに合格後、今月12月に行われたファイナルクォリファイングトーナメントでは26位に入ることができた。来年はトーナメントに優先的に出場できる権利が発生することになる。「来年1月にPGA会員入りして間もなく、シンガポールの試合に参戦してきます。メンタルの部分を磨くことで、新しい世界への挑戦が始まりました。自分がどれだけ戦えるのかわからず、ドキドキしていますが、精いっぱい笑顔で楽しんできます」。プロゴルファー山浦が、新人戦の優勝を自信に、来年に向け新たな一歩を踏み出した。