三重県にある阿山カンツリー倶楽部で開催された「
第10回PGAティーチングプログランドシニア選手権大会
」の最終ラウンドは、1打を巡る攻防戦が繰り広げられた。風が吹き荒れる中で混戦を制したのはグランドシニア2年目を迎えた浜田節夫(61・A)。浜田は2010年のティーチングプロシニア選手権覇者であり、シニア、グランドシニアと2つ目のティーチングプロタイトルを獲得した。
首位とは1打差2位からスタートした浜田の最終ラウンド。1番パー4ホールでバーディー奪取。3番パー4をボギー。バックナインに入り11番パー5では2オン2パットでバーディーとし1つスコアを伸ばすものの、最終組のスコアは平行線をたどっていく。16番ホールティーインググランドで、競技委員から同組の大山努(63・A)と浜田が通算1アンダーで首位タイの位置にいることを知らされて、この先の残り3ホールをかけた大山とのまさに一騎打ちが始まった。
大山の繊細なアイアンショットを見せつけられた浜田は、アドバンテージとする正確で飛距離のあるドライバーショットで対抗。2人の戦いはお互いを引けを取らず、通算1アンダーでホールアウトし、プレーオフに持ち込まれる。
10番パー4ホールで行われたプレーオフ1ホール目は、両者2オン2パットでパー。2ホール目のセカンドショット。大山の球はグリーン手前のラフに捕まり、寄せきれずボギー。浜田のショットはピン2メートルの距離に着けて、パーパットを沈めプレーオフを制した。大山と浜田は2日間同組で一緒に過ごした同士でもあり、最後まで戦い抜いた健闘を称えあった。浜田は2010年のティーチングプロシニア選手権でもプレーオフ決戦で勝ち、2戦2勝と強さを示した。
浜田は2週間前に歴代チャンピオンでもある「ティーチングプロシニア選手権大会」に出場。第1ラウンドでは首位と4打差6位とし優勝圏内にいた。最終ラウンドでは前半でスコアを伸ばし一度はトップに立った。しかし「勝つことばかりに意識してしまって、自分でどんどん崩れてしまったんです」と振り返り、首位と4打も着けられ4位で大会を終えた。これまでの悔しさがあふれ出た。
「11年前の優勝から、タイトルになかなか手が届きませんでした。グランドシニア入りをした昨年の大会でも最終日最終組の好位置にいたのに、チャンスを生かしきれず悔しい思いでコースを後にしました。2週間前に優勝のチャンスを自ら手放してしまったので、今回こそという思いは人一倍強かったのです」。夢を描いていた優勝は何度も目の前からすり抜けていった。苦い経験から「絶対に優勝する」と強い意志を持って、浜田はこの大会に挑んだ。そして念願だったティーチングプロ選手権2つ目となる「グランドシニア」タイトルを掴みとることができた。
今回勝因のひとつに「ドライバーを10グラム軽くした」という答えが返ってきた。184センチという長身から繰り出されるドライバーショットは280ヤードを越えるが、グランドシニア世代に入り、体力、柔軟性、スイングスピードに衰えを感じることが多くなった。そこで春先にドライバーのシャフトを0.5インチ伸ばし、60グラムから50グラムへ変更すると、かつての味わっていたショットの気持ちいい感覚がよみがえってきたという。「シニア世代ですから。歳を重ねていきながら、自分に見合ったものを見つけていくしかないのです」。自分の現状を理解し納得するためには時間と労力が必要としたが、その対価として安定したドライバーショットを手に入れることができた。
浜田は愛媛県にある「アクティはしはま」「いよてつゴルフ」のゴルフ練習場2か所で週6日、ほぼ休みなく約100人のレッスン生を抱える人気ティーチングプロとして活動している。レッスンのポリシーは一方通行で教えるのではなく「気付かせるレッスン」を意識しているという。「今自分がどういう状態にあるか、わかってもらいたいんですね。私自身も俯瞰してレッスンを行っています。そうそう、12月からはトラックマンという飛距離弾道測定器を使って新しいレッスンを取り入れるので、より精度を上げた内容で、ゴルフへの理解を深めてもらえると思います」。浜田の探求心はまだまだとどまることを知らない。