50歳以上のPGAティーチングプロシニア日本一を決定する「
第17回PGAティーチングプロシニア選手権大会
」の最終ラウンド。北風が強く吹く1日なった中、6位タイスタートの中根初男(58・TP-A)が通算1アンダーでホールアウト。首位スタートの髙橋正博(58・TP-A)が4つスコアを崩し、通算イーブンパーでフィッシュしたため、中根が逆転で初優勝を遂げた。3位には1オーバーで長峰全(58・TP-B)が続いた。
首位と4打差で迎えた最終日。中根初男はスタート前の練習を終えると、打席でボールを打っていた首位の高橋正博に朝の挨拶代わりに声をかけた。「今日はどれくらいのスコアで回るつもりなの?」。髙橋は「風が強いですからね。うまく回って1アンダー、イーブンパーかな」と答えた。1アンダーでのフィニッシュなら通算5アンダーが優勝スコアになる。中根は5アンダーで回る意を固めて、髙橋に宣言した。「今日はプレーオフをしようね」。それは高橋への宣戦布告でもあった。
中根には首位に追いつく自信はそれほど持ち合わせてはいなかった。「去年の大会では4位したが、72と70での2アンダーでした。プライベートでラウンドしても、このコースではよくてパープレー前後、叩けば80を切るのが精一杯なんです。決して得意のコースではありませんでしたが、気合いだけは誰よりも入れていたつもりです」。
コロナ禍によって、自己流で筋力アップトレーニングを自己流で始めた。だが、昨年7月に右ひざを痛めてしまい、膝に水がたまるようになってしまったのだった。「始めのうちは2週間に1回、水を抜いていました。辛かったです。それでも今年4月からは大分よくなって、水を抜かずに済ませています」。
来年のシニアツアー出場を目指し、今年の目標は二つある。予選会(QT)突破と今大会優勝による来年の日本プロゴルフシニア選手権出場資格の獲得だ。
「勝つか負けるか。優勝しなければ意味がないほど、この大会で勝つしかない!と思って臨みました」。その気合が、スタート前の高橋への挨拶にも表れていたのだ。
アウトコースからスタートした中根はボギーを先行させてしまう。しかし、9番パー5ホールでバーディーを奪い、スコアをイーブンパーに戻し、バックナインに向かう。同組の浜田節夫が好調ゴルフを展開して通算3アンダーの首位に立っていた。「まずはスコアを3アンダーにして首位に並ばなければ」と中根は気合いをさらに入れる。10番パー5ホールで着実にバーディーを奪うと、浜田はバーディーパットを外した。その差2打差。11番パー4ホールで浜田がダブルボギーを打ち、中根は目前の目標だった首位の座に就くことができた。
13番パー4ホールでボギーを叩いたものの、14番パー5ホールでバーディーパットをねじ込み、通算1アンダーにスコアを戻す。15番ホールではスコアチェックがあり、中根は単独首位であることを知った。「最終組のスコアがわかりませんでした。おそらくアンダーパースコアの選手が二人はいるはずだと考え、仮想のライバルと張り合うつもりで残りホールをプレーしました」。
中根はバーディー逃しのパーセーブを続け、ホールアウトするとクラブハウスリーダーであることを知った。最終組の高橋が1打差の2位。練習場で約束した通りのプレーオフになりそうだったが、髙橋がティーショットを右に曲げ、3オンした瞬間に中根の初優勝が決まったのだった。
「2019年の福島県シニアオープン以来の優勝です。嬉しいです。日本プロシニア選手権に来年出場できるんですよね。この自信を胸に、12月のQTも突破してみせます。来年はグランドシニア入りなので、頑張りますよ」。
優勝カップを高々と掲げながら、秋の青空をバックに有言実行の勝利を喜んでいた。