船橋カントリークラブで18日に行われた船橋CC杯関東プロゴルフゴールドシニア選手権大会の最終ラウンド。通算5アンダーで尾崎健夫(68)と大野雅幸(71)が首位に並びプレーオフへ。3ホール目で尾崎がパーパットを外し、大野がプロ入り46年目で嬉しい初優勝を飾った。優勝賞金100万円と日本プロゴルフゴールドシニア選手権大会の出場資格を獲得した。
68歳以上、関東で活動するプロゴルファーだけが出場できる船橋カントリークラブカップ関東プロゴルフゴールドシニア選手権大会は110名が参加。中でも尾崎健夫、横島由一、海老原清治、飯合肇、福沢孝秋といった12名は、レギュラーツアーやシニアツアーで勝利を収めているベテラントッププレーヤーが名を連ねていた。
最終日最終組には大野雅幸、波木俊夫、そしてレギュラーツアー6勝の横島由一、欧州シニアツアー賞金王の海老原清治が並んでスタートした。1番ホールで大野は2オンに成功し、5メートルのバーディーチャンスに着けた。大野のパッティングは80センチほど外れ、ボールマークした。続く海老原は1.5メートルのバーディーパットを沈める。大野は「さすがだ、これが一流プロのゴルフだな」と魅了されていた。感動と緊張のあまり、大野は自分がマークしたパーパットを忘れ、次のホールに向かおうとした。海老原に「だめだよ、カップインしないとね。戻って」と言われ、早々に冷や汗をかいたが、同組メンバーはそんな大野の焦りを暖かく見守っていた。
4番パー4ホールでは5メートルを沈めてバーディーが先攻。その後のホールはパーで凌いでいたが、苦手なロケーションの9番ホールでティーショットをダフり、バンカーにつかまるなどトラブルが続き、ダブルボギーで1つスコアを落とした。最終組ハーフターン時点で、前組でプレーしていた尾崎健夫が5アンダーで首位、3打差2位グループに海老原、大野という展開だった。
後半に入ると、それまでスコアが伸び悩んだ最終組に動きが出る。大野が11番パー3で2つ目のバーディー。13番パー5では、60ヤードの3打目がカップに吸い込まれイーグルを奪取。16番パー3では、7メートルある下りのラインにパッティングが合い3つ目のバーディーを重ねた。「優勝できるよ」と海老原に言われ、プレーには自信がみなぎり優勝の2文字もちらつきはじめた。残り2ホールの時点で大野が6アンダー、前組の尾崎は3アンダーだった。
17番パー4。尾崎は6メートルのバーディーパットを沈める。後続の大野はティーショットをフェアウェイに置いたものの、セカンドショットは左のガードバンカーへ。難しい傾斜からのバンカーショットはピンをオーバーして3パットでボギー。この時点で尾崎と大野は1打差になった。最終18番パー5では、尾崎は2オンに成功しバーディー。大野は3オン2パットのパー、通算5アンダーでホールアウト。尾崎に追いつかれた形で、優勝を決めるプレーオフに突入した。
大野にとってプレーオフは、人生で2度目。1976年プロテストに合格し、その年の新人戦で、中嶋常幸、秋富由利夫とプレーオフを経験しているが敗退。そんな経験もよみがえり「チャンスが来るまでパーセーブを続けよう」と、自分に言い聞かせた。相手はレギュラーツアー15勝を挙げているシニアスター選手だった。
10番パー4、18番パー5を繰り返すプレーオフ3ホール目。大野はグリーン奥8メートル、尾崎はグリーン手前8メートルのバーディーパット。大野はしっかりと寄せてパー。尾崎は80センチほどのパーパットを外してしまい、大野がプレーオフ対決を制し、優勝が転がり込んできた。
「昨夜から心ここにあらずでした。初日のイメージではなかなか回れないものです。最終日はどうしても攻めの姿勢になってしまいます。すごいプレーヤーと回ると、自分のプレーが引っ張られてしまうのです。勝とうとする気持ちをどうコントロールしようか、どうやって気持ちを切り替えればいいのか模索しながらではあったのですが、最後までパープレーを目標にして、冷静になれました」と振り返る。
2000年にシニアツアー参戦。シードには手が届かなかったが、これまで数多くの予選会には挑戦を続けてきた。プロとして試合で活躍できることを夢にみて、諦めることなく練習を重ねてきた。2018年の日本プロゴルフゴールドシニア選手権では、海老原と回った2位タイが最高位だという。
大野は5年前まで千葉県銚子市にあるレインボーヒルズCCでキャディマスターを務めていたが、退職した今でも、朝はパッティング、夕方はショット練習と日に2回コースで練習を重ね、ゴルフが生活の一部になっている。プロ生活46年目。71歳になった今でも、大野はレインボーヒルズCCに所属し、自分のゴルフ道を貫きとおしている。「練習環境を提供してくださって、本当に感謝しかありません」と力強く口にした。
「これまでの経験が生きているし、ようやく役に立ってきたのかもしれません。新人戦で敗れたプレーオフもリベンジができたし、自分自身の成長がみられました。ゴルフの神さまが、やっとご褒美をくれましたね。まだ夢心地です」。ゴルフは一打で大きく展開が変わってしまうことを知らしめされた長い一日だった。初優勝がゴールド公式戦という大きなタイトルを手にして、ようやく勝利の美酒を味わえる日がやってきた。