国内シニアツアーの今季最終戦「いわさき白露シニアゴルフトーナメント」の2日目の競技が終了。64歳の水巻善典が2日間ボギーフリーで「67」を2つ並べ、唯一2ケタとなるトータル10アンダーで2位に1打差の単独トップに立った。トータル9アンダー・2位タイには今季2勝目を目指す兼本貴司と、6年連続優勝がかかる寺西明が続き、2打差のトータル8アンダー・4位タイには、いずれもシニアツアー未勝利の宮本勝昌、飯島宏明、渡部光洋がつける大混戦の展開となっている。
トップの水巻は昨年、賞金ランキング46位で30位以内の賞金シードを逃した。そして今年は3月に行われた「PGAシニアツアー予選会・最終予選」で9位に入り、ここまでほぼ全試合に出場。レギュラーツアー7勝、シニアツアー3勝の実力者も64歳となり、今季は「コマツオープン」の11位タイが最高位で、賞金ランキング60位でこの最終戦を迎えた。
出場義務試合数に届かない2人を除く、賞金ランキング32位以内なら来季の出場権が得られるが、50位以内に入れないと、12月に行われる「PGAシニアツアー予選会・1次予選会」に回ることになる。水巻はすでに12月21~22日に福岡の玄海ゴルフクラブの1次予選にエントリー。「予選会の練習だと思って持ってきた」と、今季は一度も使用していない長尺パターで今週はプレーしている。長尺パターを使うのは3月の最終予選以来だという。
そもそもは長尺パターでプレーしてきたが、「長尺パターは5メートルくらいが入っても楽しくないんですよ。短いパターのほうが“入れた感”がある。それを欲しがっちゃった」という理由で短尺にチェンジ。4月の開幕戦「金秀シニア 沖縄オープンゴルフトーナメント」から直近の「コスモヘルスカップ シニアトーナメント」まで短いパターを貫いてきた。
「自分のなかで短いパターを使っている満足感というか、バッグに入れないといけないと、そこに気がいっていた。短いパターでもできるっていう気持ちを欲しがっていたのかもしれない。シーズン中も確率的には長尺パターのほうが入ると思ったけど、短いパターで上手く打てていた昔に戻りたい、そんな気持ちがあったんでしょうね」。
そんなこだわりが尾崎健夫の言葉ではじけた。「何で短いパターを使っているんだ」と尾崎健夫に聞かれた水巻は「入ったときに気持ち良いんですよ」と返した。すると健夫は「欲深いね」と。「健夫さんの言葉にヒントがあった」と長尺パターに戻すことを決意。1次予選前の唯一の試合で長尺を慣らそうと、久しぶりに引っ張り出してきたパターが、まさかの好スコアにつながっている。
「短いパターはグリップこうしようとか、ボールをしっかりコロがそうとか考えちゃうんですよ。長尺パターはただ持っていて、ラインとスピードのことだけ考えて打てばいい」と、今週はグリーン上でシンプルに考えられている。その結果、「ラインがわかったら、5メートル以内は絶対に外れないみたいな。そんな感覚です」とまでいう。
加えて今週は長年タッグを組んできた樋口忠仁さんがバッグ担いでいる。日本シニアオープン以来、今年2回目だ。「彼はもともと俺のキャディをしたくてこの世界に来た。だから俺のそばにいるのが楽しいんだよ。今週は良いスコアでテンションが高いから、キャディバッグのなかには『レインカバーもお願いします』って感じで、いろんなものが入っているよ。俺よりも気合いが入っちゃっているのよ」と笑う。
シニアツアーでは帯同キャディも電動カートにキャディバッグを積むことができるが、樋口さんはレギュラーツアーと同じようにアップダウンの激しいこのコースで、キャディバッグを担いで、水巻のとなりで楽しそうにしている。きょうは午前中から雨が降り、「雨が降ったらカートに乗せろよ」と水巻が言っても聞かなかった。
20年の「コスモヘルスカップ」以来、2年ぶりのシニアツアー4勝目に向け、残り18ホール。「天気が良くて風が吹かなければ優勝は14、15アンダーに行くだろうし、風が吹いていたらリードしていたほうが楽。だれか電話で台風を呼んでくれない?」と冗談を飛ばす64歳。賞金ランキング32位以内のシードまでは約359万円で単独3位以内、12月の1次予選免除の50位までは約126万円で単独9位以内が目安となりそう。運命の最終日の結末はいかに。