先週、国内女子ツアーではシード争いが決着し、きょうから国内男子ツアーでも来季の仕事場をかけた戦いが始まっている。そして国内シニアツアーも今週が最終戦。明日の金曜日から3日間競技、「いわさき白露シニア」が終わった時点で、賞金ランキング30位以内に入った選手たちだけが来季の出場権を確保できる。
ここで順位を整理すると、プラヤド・マークセン(タイ)が賞金ランクトップで、今大会の結果を待たずして4年ぶり4度目の賞金王獲得を決めている。そして、賞金ランキング2位の藤田寛之は今週レギュラーツアーに出場するため、シニアを欠場するが、3位の深堀圭一郎が優勝しても逆転できないため、藤田の2位も確定している。やはり注目はシード争いとなる。
シード圏内の賞金ランキング30位以内の選手のうち、12位の谷口徹と18位の手嶋多一は、出場義務試合数の9試合に届かないため除外。2人分繰り下がるため、賞金ランキング32位までの選手がシードを獲得できることになる。27位から順に見ていくと、現在このようになっている。
27位 桑原克典 688万3481円
28位 倉本昌弘 683万6798円
29位 伊澤利光 677万1241円
30位 渡部光洋 664万1063円
31位 白潟英純 657万8676円
32位 野仲茂 647万2966円
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33位 平野智行 639万3065円
34位 篠崎紀夫 637万7874円
35位 田村尚之 625万4631円
この9人のうち、倉本昌弘は永久シードがあり、篠崎紀夫は21年シーズンの賞金王獲得の3シードがあるためシード争いの蚊帳の外。今大会は予選落ちがなく最下位でも19万9000円の賞金が受け取れる。優勝は1200万円で加算しなくても自動的にシード入り。2位でも570万円の賞金がえられるため、出場する76名の選手全員にシード入りのチャンスはある。ボーダーライン上の選手たちはかなりの僅差で、およそ100万円を稼げば安全圏に入れる見込み。単独15位の賞金が96万円であるため、そのあたりが目安になるだろうか。
今季、PGAシニアツアー予選会・最終予選で10位に入り、出場権をつかんだ賞金ランキング30位の渡部光洋は「順位の目標は全然なくて、1個でも上の順位で最後まで楽しめるところで終われたらいいなと。あまり考えずに、とりあえず最後まで頑張ってきます」と自然体で臨む。初めてのフル参戦となった今年については「こういうふうに出たことがなかったので、すごく良かった。毎週試合でゴルフができて、また来年もやりたいですね」と話す。
30位という位置は安全圏ではないが「思っていたよりも全然上です」と渡部は自分に及第点を与える。そして、いつも一緒に練習ラウンドしている関西の先輩で、同じ小野東洋ゴルフ倶楽部に所属する井戸木鴻樹には「いつもどおりに行け」とアドバイスされた。「言葉は少ないですけど、言わんとしていることはわかります」と仲間たちの期待も感じている。今年輝き始めたツアープロとしてのキャリアをもっと延長したいところだ。
同じく最終予選会で11位に入り、賞金ランキング33位で最終戦を迎えた平野智行は、フル参戦2年目でまだシードを獲ったことはない。あと1つ順位を上げることができれば、再び最終予選に行かなくても済むところまできた。「もちろんシードに入りたいです。下も近いけど、上を見てやるだけですね。この試合は最初からベスト10以内でやっています。ベスト10なら大丈夫」と意気込む。
今シーズンは2戦目の「ノジマチャンピオンカップ箱根」で、シニアに入って初めてトップ10に入ると、順調に賞金を積み重ねて、直近の「コスモヘルスカップ」では、初日を単独首位で飛び出し、プラヤド・マークセン(タイ)と優勝争いを演じ、自己最高の2位に入った。「上に行かなきゃしょうがなかったので開き直れたのが良かったんでしょうね。調子は良い感じで維持できているので、あとは最後のバックナインを緊張の中でどうやれるか。シードを目標にしてきたので、クリアできるかどうかは今週次第、自分次第です」と強い気持ちを持って初シードを獲りにいく。
一方、レギュラーツアーで2度の賞金王を獲得し、2001年のマスターズでは当時日本勢最高の4位に入った伊澤利光にもシニア参戦5年目にして、シード落ちの危険にある。賞金ランキング29位で迎える最終戦では4人に追い抜かれれば、たちまち予選会行きだ。ところが、シード争いについて本人に聞くと、「わっはっはっはっはっは」と笑い飛ばされてしまった。
「そりゃあ気にはしますよ。それよりも、最近アイアンの縦距離が2、3試合前から合い始めてきたんですよ」と声も表情も明るい。直近の11月上旬の「コスモヘルスカップ」では26位タイに入り、先週行われたレギュラーツアーのセカンドQTでは、若い選手たちに囲まれながら18位で来週行われるサードQT進出を決めている。
アイアン復調の要因として、「あんまり下の番手はフェード目に打たずにストレート目に打つようにしたら距離感がすごく合うようになった。それまではしっかり打ったのに全然届かなかったり、逆に上の番手では飛びすぎたり、ずっとその繰り返しだったんです。自分が思ったよりフェード打っちゃうといかないのかな」と気づいた。
そのため、レギュラーツアー通算16勝の伊澤も結果がなかなか出ないシーズンを過ごした。「ウェッジで5メートルとか6メートルにつくようじゃ、バーディにならない」と笑う。弾道の意識を変えたことで、「きょうのプロアマでも距離の前後はあまり自分のなかではなかった」と復調の手応えを感じている。
さらに、このいぶすきゴルフクラブは、98年のレギュラーツアー「カシオワールドオープン」で優勝争いの末にブライアン・ワッツ(米国)にプレーオフで敗れたコースでもある。「ワッツにプレーオフで負けたけど、全然嫌なイメージはないです。距離も長いし、グリーンもベタベタ止まるわけではなくて、スピードも出ている。比較的レギュラーツアーに近いセッティングなのでいいですね。優勝を狙っていきます」。その目はシード確保ではなく、最後の最後での優勝を狙っている。
レギュラーツアーで1勝を挙げている野仲茂はシード圏内ギリギリの32位で最終戦を迎えた。いつも仲良くしている真板潔や鈴木亨が今季勝利をあげたなかで、まだシニアでの優勝はない。「最終日最終組もあったけど自滅したし(6位タイ)、思うようなゴルフはできなかった。2人を目指してあとに続こうと思っていたけど結果が出ないからね。全部自分が悪い。せっかく良い見本が近くにいるのにそれに応えられない」と反省ばかりが口をつく。
勝利に手が届かなかった原因は伊澤と同じくアイアンにある。「ティショットは曲がらないけど、アイアンショットがバーディチャンスにつかない。レギュラーの終わりからずっとアイアンで苦しんでいる。乗るのは乗るんだけど、ピンとは違うところに乗る。2パットがやっとのところなので、平均パットが悪くなる。結果だけ見るとパターが悪いように見えるけど、実はパターでしのいでいるんです」と明かす。
確かに野仲の今シーズンのスタッツを見てみるとパーオン率は72.22%で10位タイと悪くない。しかし、平均パット数は1.8252で44位とかなり順位が落ちる。それがスコアにつながっていない原因なのだ。「練習ではすごくいいんですよ。きょうもプロアマ戦でアイアンショットも絡むし、でも試合になるとどうもね。ピンがふられてダメになるのか、自分の気持ちが弱いのかはわからない」といまも答えは出ない。
そんななか、今大会の目標については「僅差だから稼がなきゃダメだけど、たとえダメでも命を取られるわけではない。予選会に行くだけだから。シードを獲るという目標ではなく、優勝争いがしたい。自分はこの調子だけど、頑張っていたら結果は出るのかなと思ってやるしかない」と自嘲気味に笑う。
さらに野仲は続ける。「レギュラーの最後のほうなんて、いつもこの位置にいたから慣れっこ。慣れっこになっちゃ行けないけど、他の人よりは気持ちのコントロールはできるかなと。シニアになっても、こんな気持ちになるのかなと思った。結果が良くても悪くてもどっちでも笑っていられるように、今週は頑張ろうと思います」。
76名がそれぞれのゴルフ人生をにじませながら臨む最終戦。泣いても笑っても最後の3日間の戦いがいよいよ幕を開ける。