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シニアツアー

〈マルハン太平洋シニア/FR〉藤田寛之が逆転で今シーズン2勝目を飾る

2022年08月28日

 首位と1打差の7位タイから出た藤田寛之が1イーグル・5バーディ・1ボギーの「66」で回り、通算9アンダーまで伸ばして逆転優勝。今年「スターツシニア」でシニア初優勝を遂げたばかりだが、これで2勝目。賞金ランキングは1位に立った。出場権のあるレギュラーツアーを欠場して、シニアを選んでの優勝に喜びを見せた。

 最終組の一つ前の組に入った藤田。同組は桑原克典、宮瀬博文、横尾要といずれもレギュラーツアー優勝経験者。数年前のレギュラーツアーを彷彿させる組は序盤からバーディ合戦となった。1番で藤田が5メートルを沈めて首位をとらえたが、桑原が2番から3連続バーディ、宮瀬は4番から3連続バーディと二人がゲームを引っ張る形になる。

 藤田も6番、7番の連続バーディで追いかけるが、首位の宮瀬に2打差で前半を折り返した。「自分が伸ばせずになかなかついていけなかった」。流れが変わったのは後半に入ってすぐだ。10番パー4で5メートルのパーパットをしずめて迎えた11番パー5。ティショットが右のフェアウェイバンカーにつかまった。「(優勝するためには)バーディがどうしても必要なので、バーディが獲れる確率を考えて狙う選択をしました」。刻むか狙うかで迷ったが、5番ウッドで放った2打目は、1メートルにつける会心の1打。このホールイーグルとして首位をとらえた。

 続く12番パー4はティショットのミスなどからボギーとして後退したが、「あれは大きかった」という13番パー3で、5メートルのバーディパットを決めて再び首位に並ぶ。同組の選手がスコアを落とす中、15番パー4でも5メートルを沈めて単独首位に立った。

 リードを奪えばレギュラーツアー18勝の百戦錬磨の腕の見せ所。後続にスキを見せずに2位1打リードを保ったまま18番パー5を迎える。ティショットはフェアウェイをとらえ、グリーンエッジまで残り234ヤード。グリーン右サイドには池が待ち構える名物ホールで3番ウッドで打てば2オンも可能な距離だが、藤田は8番アイアンを握った。

 状況的には先にホールアウトした秋葉真一が通算8アンダー。最終組の深堀圭一郎と崎山武志が7アンダーグループ。「リードしているで“あろう”立場で、自分が狙ってミスをすることもあるのでミスをしない選択をした」。ピンまで87ヤードを左奥6メートルに乗せて2パットのパー。後続の深堀と崎山も見せ場は作ったがバーディ止まり。攻めが必要な11番ではイーグルを奪い、落とすことが許されない18番ではきっちりパー。勝負所での攻守の駆け引きが奏功した。

 今年53歳になった藤田は、昨季、23年守ったレギュラーツアーの賞金シードを喪失。今季は「生涯獲得賞金ランキング25位以内」の資格を行使してレギュラーツアーに参戦している。今週は福岡で「Sansan KBCオーガスタ」が開催されていたが、御殿場の地を選んだ。

 今年はショットの不調などからレギュラーツアーでの成績が思わしくない。シニアでは6月に初優勝を遂げて賞金ランキング上位。シニアツアーの賞金ランキング上位ならシニアの海外メジャーの道が開けることから心が動いた。

 「(レギュラーの)海外メジャーに19回行かせてもらいました。プロとして(シニアでも)その舞台を見たいし、感じたい。そこを一つの目標にしています」。これまでレギュラーとシニアが同週開催の場合はレギュラーを優先してきたが、この夏はシニア優先を決断した。

 先週の「ファンケルクラシック」はショット、パットともに不調で30位タイに終わっている。「シニアといっても調子が悪いと結果が出ません。レベルが高いですし、プロの世界はあまくないですよね。出れば出るほど感じます」。藤田といえども調子を落としていると結果を残せないのがシニアの世界。

 今週も初日はショットに苦しんだが得意のショートゲームで「69」にまとめ、最終日はショットが復調し、勝負所でパットを決める藤田らしいゴルフを見せた。「レギュラーを欠場してシニアに来ているので結果を残さなければいけないプレッシャーは正直あるんですよね」と重圧を感じながらもしっかり勝ち切った。

 「海外メジャーという目標があるので気持ち的にも締まってきますし、やることも明確になってきます」。次戦以降も数試合はシニアに出場を予定しており、全力で臨む構えだ。ただ、レギュラーツアーのシード権をあきらめたわけではない。「シニアの海外メジャーとレギュラーツアーのシード権というのが今の目標です」ときっぱりと口にする。

 次戦の「コマツシニアオープン」には、芹澤信雄を師匠とするチームセリザワの同門でこの日50歳の誕生日を迎えた弟弟子・宮本勝昌がシニアデビューとなる。「昔みたいに3人で練習ラウンドできるのは楽しみですが…レギュラーでばりばりやっている人ですから。自分より30ヤード以上飛びますし、一緒にやっていても勝てる気がしないので。宮本さんが来る前に勝ててよかったですよ(笑)」。そう話すが20年以上切磋琢磨してきた存在がいることで、藤田も強さはさらに増す予感もする。