プロアマ形式で行われている今大会。アマチュアは太平洋会員の部と著名人の部に分かれている。第1ラウンドを終えて千野英樹さんが「71」の1アンダーで太平洋クラブ会員の部でトップ。プロ野球の元広島・前田智徳さんが「74」の2オーバーで著名人の部でトップとなっている。プロ顔負けのスコアでラウンドした二人は同組だった。前半はともにアンダーパーでプロをしのぐスコアで回っていた。
二人と同組のシニアプロの一人は、レギュラーツアー通算7勝でシニア2年目の宮瀬博文。「前半はショットがちょっとよくなくて」と5番でボギーが先行し、7番でこの日初バーディとして前半はイーブンパー。アマチュア二人を追いかける形で折り返した。「プロの意地」というつもりではなかったと思うが、終盤に魅せた。
14番パー4で3メートルを沈めてバーディーを奪うと、15番パー4は「完璧だった」という2打目を1メートルにつける。17番パー3は左から4メートル、18番パー5は2オンに成功して2パットのバーディ締め。終盤5ホールで4つスコアを伸ばし、5バーディ・1ボギーの「68」として首位タイで最終日を迎える。
怒涛のバーディーラッシュはスイングの意識を変えたことで生まれた。「前半はちょっと右手を使っていこうとか、左手を使っていこうかとか考えていて右手を使っていたけど、よくなかったので戻しました。あまり手を考えずに体を使おうと。そしたらしっかり当たるようになったんです」。ちょっとした意識を変えるだけでショットが見違えた。レギュラーツアー時代からショットメーカーとして名を馳せてきたが、真骨頂を発揮した。
シニアシーズン2年目の今年は、初優勝を目標に掲げる。昨年はデビュー戦の「ノジマチャンピオンカップ箱根」で篠崎紀夫にプレーオフで敗れて2位止まり。終盤4戦中3位3回といいところまでいったがデビュー年に初優勝を遂げることはできなかった。
1989年に18歳でプロテストに合格した宮瀬は、92年には当時史上最年少の21歳でシード権を獲得。長年第一線で活躍し、7回のツアー優勝を挙げている百選錬磨でも、そう簡単に勝てるワケではないという。
「優勝は難しいですよ。先輩たちのレベルが高いからしっかり練習して、体もちゃんと整えないとそう簡単にはいかない」。1年戦ってシード権は獲得したものの、優勝に手が届かなかったことにシニアの難しさを感じ、自分もレベルアップをする意識を高めた。
今週は勝ちたい理由がもう一つある。「身内をキャディにするのは初めてですね」。相棒に指名したのは長男の竜太郎さん。来月から米国に留学することが決まっている。「最初で最後かもしれないから、やるかって誘ってみました。いい姿を見せたいっていう年齢でもないけど、いいところは見せたいですよね」。
竜太郎さんは年に1回ラウンドする程度で「ゴルフのことはよくわかっていない」というが、コース内では会話も弾み、ゴルフ場を後にすれば二人で風呂に入ったり、「楽しくやってますよ」と心の支えになっているようだ。
シニア初優勝、子供の前でかっこいい父親を見せるには最高の状況が整った。「もちろん優勝目指しますよ。明日は空回りしないようにしないと。いつもちょっといいと空回りしちゃうから(笑)。ゆっくり、じわじわいきたいと思います」。シニアの世界だけでもなんども負けを経験した。その経験をいかして、息子と二人三脚で頂点に向かう。