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シニアツアー

〈マルハン太平洋シニア/前日〉森田徹は前年覇者の肩書にも気張らず楽しむことが目標

2022年08月26日

 夢を叶えてから1年。レギュラーツアー時代は無名だった森田徹が、シニアで初めてツアー優勝を遂げた地に帰ってきた。「昨年は奇跡でした」と振り返るが、連覇のかかる今年も奇跡を狙う。

 明日27日(土)から2日間で行われる今大会。開幕前日のこの日は、著名人や太平洋クラブ会員らが参加するプロアマフェスティバル。「1年は早いなぁ。あっという間でしたね」。大会の雰囲気の中コースを回ると1年前のことが鮮明に思い出される。「すべての“風”が僕に流れていたかって思います」と振り返った。

 昨年大会、初日「66」をマークした森田は、レギュラーツアー通算30勝の倉本昌弘と並んで首位発進。倉本や歴代覇者の秋葉真一らと人生初の最終日最終組に入った。最終日は1番から幸先よくバーディを奪うなど、前半3つ伸ばして倉本と並走したまま折り返す。10番で森田がボギー、11番で倉本がバーディとして、一時は2打の差が開いた。

 追いかける立場になった森田は「気持ちが楽になった」と、しっかりと倉本の背中を見ながらスコアメークに徹した。すると倉本が14番、15番で連続ボギー、16番でダブルボギーとまさかの失速。2打差で森田を追っていた秋葉は、15番パー4で完璧なショットがピンに当たって大きく跳ね返されてこのホールパー。森田に“追い風”が吹いたこともあり悲願の初優勝を遂げた。「倉本さん、秋葉さんら先輩に胸を借りてできたのが1番強かったかなと思います」。初めての優勝争いも挑戦者の気持ちで臨めたことが勝因だったと話す。

 1997年に26歳でプロテストに合格した森田。下部のチャレンジツアー(現・ABEMAツアー)では2勝挙げているが、レギュラーでは優勝どころか、賞金シードも未経験。2014年に2試合(いずれも予選落ち)に出場したのを最後にレギュラーの舞台から去った。

 その後は下部の試合に出ることもあったが、20年に50歳を迎えるシニアツアーに目標を定めた。昨年はQT16位でツアーの出場権をつかむと、練習時間を増やすために長年所属していたゴルフ場を退職。覚悟の1年で初優勝を遂げ、賞金ランキング17位と見事に結果を残した。

 「シニアツアーは憧れの選手、レジェンドと回れるのがすごく嬉しいし、勉強にもなります。シニアだと挑戦する気持ちで臨めるのがいいかなと思います。レギュラー時代はショットに自信がありましたけど、今は曲がるのでショートゲームがカギ。あきらめずに粘り強くやれるようになりましたね」。シニアフル参戦1年目はレギュラー時代とは違う心境で戦えたという。

 優勝の勲章を携えて迎えた今季は、ここまで5試合に出場して「すまいーだカップ」で6位タイに入っているが、トップ20はこの試合のみ。30位までにシード権を付与される賞金ランキングは32位と圏外にいる。ショットの状態がよくなかったのが要因だが、先週の「ファンケルクラシック」で転機があった。

 第2ラウンドでレギュラー10勝、シニア13勝の高橋勝成と同組。ホールを終えたところで「終わったら練習しようか」と声を掛けられ、ホールアウト後にアドバイスをもらった。「自分のいいところが消えちゃっているから、もっと生かしてやるように言われました。少し自信を持って打てるようになりましたね」と御殿場入り。水曜日の練習ラウンドでは、プロ仲間から「ここに帰ってくると気分よくやれているね」と声をかけられるなど、好相性のコースも手伝い、前週までと見違えている。

 高橋からのアドバイスは吉兆でもある。ちょうど1年前もショットの状態は悪かったが、今大会前週に高橋からアドバイスをもらった。「あの時だけショットがすごくよくなったんです。不思議な二日間でした」と優勝を手繰り寄せた。「もしかしたら先週(高橋)勝成さんに教わっちゃいましたし、また奇跡が起こるかなって。でも自分では連覇とか思わないし、回りも冷やかしながら(連覇と)言ってくれますけど、普段どおりできたらいいと思います」。あくまでも挑戦者の気持ちで臨む構えだ。

 シニアデビューして3年目。「この場はすごくやりがいがあるし、楽しいし、ここを目指してやってきたので1試合でも長くいるために優勝するのも大事ですけど、シード権を確保してまた来年も出たい」。まずはシード権確保につながる成績を残したい。

 息の長いプロゴルファーでいるためには、ケガをしないことを第一に掲げる。「だからトレーニングはやらないんです。(師匠の)海老原(清治)さんにいわれた竹ほうきの素振りぐらいです。毎日クラブを握ること、ゴルフの動きをすることを大切にしています」。加齢による体型の変化に気を使い夜は炭水化物を摂らないなどの食事にも気を使う。

 「二度とないかもしれないディフェンディングチャンピオン。明日から楽しんで、気張らずやろうかなと思っています。不慣れなことなので、いい意味でも悪い意味でも緊張しています」。昨年と違うところは“前年覇者”という肩書を背負っていることだが、よく言えば勝つことを知っている経験値である。「普段どおり」を強調する森田が2度目の奇跡を信じる。