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シニアツアー

〈FANCL CLASSIC〉前年覇者・田村尚之はグリーンが読める“新しい相棒”と連覇目指す

2022年08月18日

  あす19日から3日間、夏の祭典「ファンケルクラシック」が開催される。昨年大会は田村尚之が秋葉真一、阿原久夫とのプレーオフを制してシニアツアー2勝目を挙げた。その隣には深刻な乱視でグリーンがうまく読めない田村の目となって、ラインを教える鈴木美穂さんの姿があった。しかし今年、その姿はない。

※2021年優勝時写真右が美穂さん

 美穂さんはこの裾野カンツリー倶楽部の元ハウスキャディで、田村が出場した7回すべてでキャディを務めてきた。20年12月に美穂さんは旦那さんの転勤によって愛知県に引っ越したため、裾野CCをすでに退社していたが、昨年は田村の熱烈なラブコールによって、中止となった20年大会を挟んで2年ぶりにコンビが実現。「ラインは完全に美穂ちゃんまかせ」と、田村のシニアツアー2勝目へとつながった。

 今年、美穂さんに代わってキャディを務めるのは、裾野CCでハウスキャディ6年目という松田桃佳さん。昨年はコロナ禍で無観客だったため、キャディバッグをカートに積んで移動することができたが、今年は有観客のため帯同キャディがバッグを運ばなければならない。アップダウンのある裾野CCだけに「美穂ちゃんは担ぎはさすがにできない」。代わりに美穂さんが田村に紹介したのが、「彼女が育ててくれた」桃佳さんだった。

 水曜日の練習日が初顔合わせだったが、いきなり息の合うコンビを見せ、バーディパットを何度もカップに沈めた。桃佳さんがグリーンを読んで、田村がその通りに打つスタイルは昨年までの美穂さんのときと変わらない。田村からは「グリーンのメモを捨てようかな」という冗談まで飛び出すほど、桃佳さんの読みは的確。「僕がグリーンを読むと、変なものが入るから、直立不動で言われたとおりに『はい』と言った方がいい」と笑う。

 桃佳さんは、昨年大会ではカート1台に1人付くキャディとして、複数の選手のサポートをしていたが、帯同キャディとして1対1でやるのは初めて。「田村さんはグリーン上はほとんど聞いてくるから、的確に伝えられるように頑張って」と美穂さんから桃佳さんには申し送りしている。田村は連覇に向けては「僕の場合はパッティングです。夏場のグリーンは遅いので、しっかり打たないとダメ。バッティングが弱気にならないようにしたいですね」と話す。

 昨年大会は最終日のフロントナインを終えて、首位とは4打差で優勝争いから脱落しつつあった。田村が弱気になると美穂さんが鼓舞し、折り返した10番でバーディを奪うと、残り4ホールから3つのバーディで追いついた。18番パー5で行われたプレーオフでは、カラーから「ワンカップフック」と美穂さん読んだ4メートルのイーグルパットを決めて劇的な勝利。田村は何度もピョンピョンと跳びは跳ねて喜んだ。

「(連覇を)狙うってことはないですけど、ベスト10というか最終日に緊張するようなところでやりたいですね」と今大会へのコメントは控えめながら、6月に出場した「全米シニアオープン」で大きな刺激を受けて、気持ちは高まっている。

 全米シニアの初日は、大雨の午前中にスタートして「80」。2日目はパープレーの「71」をマークしたが、初日の出遅れが響いて予選落ち。カットラインが5オーバーという難コースに打ちのめされたと思いきや、「でも満足でしたよ。飛距離は別として、僕はアイアンでターフを取らずに(クリーンに)打つ方だから、打ち込まなくても上手くボールを拾えたし、2日目は途中まで3アンダーで回れていた。自信にもなった」と手応えを感じて帰国した。

 実は田村は「今年でシニアツアーは終わり」と撤退を示唆していた。渡米前には「最後のメジャー」と位置づけた全米シニアだったが、出場して「もう一度行きたくなった」と考え方を変えた。「もう1,2年頑張りたい。やる気が出てきました。もしかしたらまた(海外メジャーで)やれるかなっていう気もしてきた」と58歳の目は輝いている。同行した妻と息子からも、「もう一回アメリカに連れて行って」とリクエストを受けた。

 今シーズンの賞金ランキング10位以内の上位2名の資格で、来年のシニアメジャー「全英シニアオープン」、同4位以内の資格で「全米プロシニア」と「全米シニアオープン」の出場権が得られる。来年再びメジャーの舞台に立つためには「どこか大きい試合で優勝しないといけないし、難しいとは思う」と言いながらも、「ちょっとモチベーションが上がってきた」と気合いは十分。田村の現在の賞金ランキングは23位だが、今大会の優勝賞金は1500万円と高いため、優勝すれば一気にトップに躍り出る可能性もある。桃佳さんとの新コンビで、海外メジャーへの足がかりを掴みたいところだ。