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シニアツアー

【スターツシニア/大会前日】藤田寛之、53歳初戦はシニア「久々に優勝争いのドキドキをしたい

2022年06月16日

 藤田寛之はきょう16日に53歳の誕生日を迎えた。43歳で賞金王に輝いたのはもう10年前。昨シーズン、23季連続で守ってきた賞金シードを失い、今季は生涯獲得賞金25位以内の資格でレギュラーツアーを戦っている。今週はレギュラーが空き週のため、あす開幕する「スターツシニア」で、丸1年ぶりにシニアツアーに出場する。



 2年前の20年にシニアデビューを果たしたが、レギュラーツアーを主戦場としていたため、20年はシニア3試合、21年は昨年大会の1試合の出場にとどまった。そんな藤田も心境が変化してきている。



 「おととしシニアに出させてもらったときは、自分が一番若いというのが、すごく不思議でした。それもだいぶ慣れてきましたね。当時は『お前が来るのはまだ早いよ』って言われましたけど、それももう言われなくなりました。いまはレギュラーで結果を出す苦しさが強くなってきている。だから余計にこっちに来るとしっくりくる。初年度はしっくりこなかったんですけどね」


 レギュラーツアーのピリピリとした勝負の世界にこだわってきた男が、「シニアは居心地がいい」とまで感じるようになったのはなぜなのか?


 

 「多分、手嶋(多一)さんとか谷口(徹)さんとか、やっている人にしかわからない。レギュラーのいまのレベルはすごいし、そのなかで自分のパフォーマンスが低下していくのと戦わないといけない。レギュラーの生きるか死ぬかみたいな空気もいいと思うんですけど、一回戦いが終わって、もう一回チャンスをいただいている人たちが、そこに感謝しながらやっている温かい空気が何かいいですよね」。



 それには、23季連続で守ってきた賞金シードを失ったことも関係している。「賞金シードを持っている間は、自分が勝ち獲ったシード権というプロのプライドがあって、レギュラーが主戦場で100%だった。生涯獲得は純粋な賞金シードのカテゴリーとは違うので、レギュラーに対しての思いが70%とか60%になる」と藤田は話す。



 昨年までは、レギュラーツアーが空き週で、シニアに出られるときでも、「休養したり、トレーニングしたり、打ち込みしたりしないと戦えないと思っていた」とシニアには出ず、レギュラーのために時間を使ってきた。それが今年は、「重なっていないところに関しては試合優先で出させてもらう」とシニアの試合数を増やす予定だ。「怪我をするのでガツンとできない」と40歳を過ぎてから続けているトレーニング自体の強度は下がったが、週2回だったものを週3~4回に増やして、歳とともに動かなくなる体と折り合いをつけている。



 昨年は左のミスへの残像が消えず、ショットの不調に苦しんだ。今年もまだそれを引きずっていて、レギュラーツアー9試合に出場して5試合で予選落ち。最高位は前週の39位タイと苦しい戦いが続いている。それでも今週は、師匠の芹澤信雄が同じ試合に出ていることで、ショット復調の糸口を掴みつつある。



 「久々に芹澤さんにお会いして、スイングをチェックしてもらって方向性が見えてきた。1人でやっていると『何をやればいいのか』わからなくなってくる。毎回思うんですけど、芹澤さんに見てもらうと不思議な現象が起こるんですよ。スイングがどうこうっていうより実際にボールが変化する。狙ったところに飛ぶようになる。芹澤マジックです」。



 具体的には何を変えたのか。「多分伝わらないと思うんですけど『腰のリード』です。手を放っておいて腰のリード。あとは芹澤さんが『こうだろ』ってやってくる形とかね。言葉にすると、『もっとフェースをボールに向けていく』とか、『もっと腰のターンの量を多くする』とか、『もっとクラブを左に振っていく』とか、そんな感じ」と藤田。プロアマ後の練習場では、藤田の打つ球を見て、「これなら大丈夫」と納得顔の芹澤がいた。



 毎年のように50歳の“若い”選手が入ってくるとはいえ、53歳ではシニアではまだ若手。藤田がいまシニアツアーに専念すれば、シーズンの賞金ランキング4位以内の資格で、「全米シニアプロ」や「全米シニアオープン」に出られたり、同ランキング10位以内の上位2名の資格で「全英シニアオープン」に出られたりと、海外シニアメジャー挑戦の道も開ける。



 本人も「いまのシニアの試合数ではなかなかそこに行けない。シニアに全部出れば…というのもあります。フレッシュなときに結果を残したい短いシニア人生を、少しずつレギュラーに使ってしまっている。自分もレギュラーでやりたいしね。なかなか難しい」というもどかしい思いもある。



 しかし藤田は、「もがき苦しんだり、挑戦したりしているのも、それはそれで意味があると思うんです。プロゴルファーとして勝つばっかりがすべてじゃない。日々諦めずに一生懸命やって結果的に何かが生まれてくれば、それはそれでいい」と話す。いまの選択に迷いや後悔はない。



 53歳初戦の意気込みを聞くと「出る以上は優勝が目標ですし、優勝争いができるところをお見せしたいというのは正直ある。最近、レギュラーでは予選落ちの“ドキドキ”ばっかりなので、久々に優勝争いの “ドキドキ”  をしたいですね」と前向きな言葉が返ってきた。



 しかも、今大会は3日間大会で予選落ちはない。「最近は(レギュラーで)毎週チェックアウトしていて、ホテルに帰れる確率が半々。予選落ちの心配がないって、こんな素晴らしいことはないです(笑)。ホテルにご迷惑かけずにすみます」と笑って締めた。日曜日にドキドキできる位置にいられるか、藤田のプレーに注目したい。