62歳、真板潔が男泣き。30センチのウィニングパットを沈めて、2017年の「ノジマシニア」以来、5年ぶりにシニア7勝目を挙げた。「この4年間、いろいろと苦しかったです。本当に嬉しいです。ありがとうございました」。優勝を見守ったギャラリーや関係者に涙でお礼の言葉を述べた。
首位と2打差の3位タイから出た真板は3バーディ・ボギーなしの「69」。2位の清水洋一に1打差の通算11アンダーで今季初優勝。「このスコアで優勝というのはラッキーかなと思います」と振り返った。
上位陣が伸び悩む1日となった。首位と2打差の通算8アンダー、3位タイで最終組に入った真板は、4番パー5で1.5メートル、6番パー5では8メートルを沈めてスコアを伸ばす。「前半は2メートルないぐらいの距離を3つ外していた。それを入れればもっと楽だったんだけどね」。通算10アンダーで折り返した。
真板自身もっと伸ばすつもりでスタートし、周囲ももっと伸ばすと想定していた。10番ホールに向かう途中、リーダーボードが目に入る。「11アンダーが一人(盧建順)だけ。あんまり伸びていない」。全体的にスコアが伸び悩み、混戦になっていると分かった。
10番パー3では4メートル、11番パー4では2メートルのバーディチャンスにつけるも、ボールはカップに沈まない。「何とかパーをつないでいた感じですね」。15番パー5のティーイングエリアに立つと、10アンダーで首位に並んでいた。勝負どころのパー5。バーディパットは2.5メートル。「これを入れれば勝てる。入らなければプレーオフかな」。勝負どころのパットはジャストタッチでカップに沈めて混戦を抜け出した。
レギュラーツアー1勝、シニア6勝の百戦錬磨の真板の読みは当たった。上位陣が伸ばしても崩れる選手が多い中、ピンチもしのいでボギーなし。安定感も光って勝利を手繰り寄せた。
「2018年あたりからゴルフがよくなくて辛かった。自分はスポンサーもつけていませんし…」。2017年「ノジマシニア」でシニア6勝目を挙げた翌年から苦しい日々が続き、19年には賞金シードも手放す。50歳過ぎてから老眼による視力の低下で得意のパットに自信を持てなくなった。4年ほど前に手術を行ったが両ヒザを故障してグリーン上ではラインを読むのにしゃがめないほどの痛みも影響していた。4年間の苦しい思いが涙腺を緩めた。
復活に向けて昨年から“本格派の自転車”を購入。「長いときで50キロ。週に3回程度走っていました」。体力強化、両ヒザへの負担の軽減もかねて筋力アップを行った。最近ではグリーンでしゃがんでラインが見られるようになり、ショットにもいい影響を及ぼしている。
最終予選会17位の資格で今季の出場権を獲得。「今年は優勝を頭に入れてやっていた。ラッキーもありますけど、優勝できたので。でも、まだまだです」。久しぶりの優勝に少しの自信を手に入れたが「パットもショットもまだまだ。年間3勝した2016年のときみたいにはならないと思いますけど、それに近づけるように。60代の初優勝ですから。50代では6勝できたので、60代でももうちょっとしたいです」と1勝では満足できない。
60代での優勝は2020年に62歳で「コスモヘルスカップ」を制した水巻善典以来。「50代の若い人に負けないように、頑張りたい」と力を込める。シニアツアーで60代の優勝回数は通算20勝を誇る室田淳の7回。最年長優勝は高橋勝成の67歳という記録がある。ここ数年、レギュラーツアー上がりの生きのいい50代の選手が増え、60代で優勝するのは簡単なことではない。それでも真板は優勝しか見ていない。
表彰式では「62歳のおじいさんの涙なんて見たくないでしょうけど、涙が出てしまいます、これからもよろしくお願いします」と締めたが、頑張るオジサンの涙はいいもんだ。